翻刻
【右丁】
長大(てうたい)なる物(もの)あり奥州白川へ鶴(つる)含(ふくみ)み【注】来(きた)るといふもの也 時珍(しちん)の説(せつ)に
一種 粒(つふ)白(しろきこと)《振り仮名:如_レ霜|しものことし》長(なかさ)三四分(さんしふ)といふもの是(これ)なり又 諸州(しよしう)水村(すいそん)の地水(ちみつ)高(たか)
さ丈余(しやうよ)の処(ところ)秧(なへ)を土弾(とたん)に挟(はさ)み水中(すいちう)に投(てう)す其苗(そのなへ)水(みつ)の高下(かうけ)に随(したか)ひ
長(てう)す是(これ)時珍(しちん)水稲(すいとう)高(たかさ)丈許(しやうはかり)《振り仮名:随_レ水而|みつにしたかつて》長(てうす)といふ此類(このるい)なるべし
粳米(かうへい) うるしね《割書:和名|鈔》 うるち《割書:江|戸》
粘(ねはり)ありて糕(かう)《割書:くわ|し》餅(へい)《割書:も|ち》とする物(もの)は前条(せんしやう)の糯米(たへい)なり此条(このしやう)は粘(ねはり)なく人民
常(つね)に食(しよく)する所(ところ)の物(もの)なり早(はや)く熟(しゆく)する物(もの)をわせといゝ遅(おそ)きをおくと
いゝ其間(そのあいた)をなかてといふ粳米(かうへい)の釈名(しやくめう)に時珍(しちん)《振り仮名:有_二早中晩三収_一|さうちうはんさんしうあり》と云
是なり時珍(しちん)曰(いわく)《振り仮名:其殻【穀の誤】殻|そのこくのから》《振り仮名:有_二紅白二色_一|こうはくにしよくあり》或(あるいは)《振り仮名:有_レ毛|けあり》或(あるいは)《振り仮名:無_レ毛|けなし》其米(そのこめ)亦(また)
《振り仮名:有_二赤白二色_一|しやくひやくにしよくあり》赤者(あかきもの)酒(さけ)多(おほく)糟(かす)少(すくなし)
【左丁】
うる
しね
一種
くまがへこぼれ
【版心の中央】
うるしね
【注 ルビと送り仮名の「み」はどちらか衍】
【三行下から三字目「地」のルビ「ち」は別の字を消した上から書かれている】
現代語訳
【右丁】
大型になるものがあり、奥州白川に鶴が運んできたというものである。時珍の説によると、
一種で、粒が霜のように白く、長さが三、四分というものがこれである。また、諸国の水郷地帯で、水深が一丈余りの場所では、苗を土の塊に挟んで水中に投げ入れる。その苗は水の深浅に従って伸長する。これは時珍が「水稲は高さ一丈ほどで、水に従って伸長する」と言ったこの種類であろう。
粳米(こうべい) うるしね《和名抄》 うるち《江戸》
粘りがあって菓子や餅にするものは前条の糯米である。この条は粘りがなく、人民が日常的に食用にするものである。早く熟するものを「わせ」といい、遅いものを「おく」といい、その中間を「なかて」という。粳米の釈名において時珍は「早・中・晩の三収穫がある」と言っている。これである。時珍が言うには「その穀物の殻には紅白二色があり」、あるものには毛があり、あるものには毛がない。その米もまた「赤白二色があり」、赤いものは酒が多く糟が少ない。
【左丁】
うる
しね
一種
熊谷こぼれ
【版心の中央】
うるしね
英語訳
【Right page】
There are varieties that grow large, said to be brought by cranes to Shirakawa in Ōshū. According to Shizhen's explanation,
One variety has grains white as frost, with a length of three to four bu. Also, in waterside villages of various provinces, where the water depth is over one jō, seedlings are inserted into soil clumps and thrown into the water. Those seedlings grow according to the water's depth. This is probably the type that Shizhen described as "water rice grows to about one jō in height, extending according to the water."
Glutinous rice (kōbei) urushine《Wamyōshō》 uruchi《Edo》
What has stickiness and is made into confections and rice cakes is the glutinous rice of the previous section. This section describes rice without stickiness that people commonly eat daily. Early-ripening varieties are called "wase," late ones "oku," and those in between "nakate." In the explanation of glutinous rice names, Shizhen says "there are three harvests: early, middle, and late." This is it. Shizhen says "the husks of those grains have red and white colors," some have bristles and some do not. The rice also "has red and white colors," and the red ones produce much sake with little dregs.
【Left page】
uru
shine
One variety
Kumagae-kobore