翻刻
【右丁】
椰子(やし) コーコス《割書:羅|甸》 インチアーンセセノート《割書:荷|蘭》
パルマイヂカ《割書:同|上》 酒樹(しゆ〳〵)《割書:潜確|類書》 矮胡(わいこ)《割書:名物|方言》
楈枒(しよか)《割書:通|雅》 哥具(かく)《割書:東西洋考|呂宋方言》 無葉(むやう)《割書:斉民要術|引神異経》
倚驕(いきやう)《割書:同|上》
暖国(たんこく)の産(さん)なり無人島(むしんとう)《割書:一名小|笠原島》に生樹(せいじゆ)あるよしこの実房州豆
州八丈島四国 佐渡(さと)其余(そのよ)海浜(かいひん)に漂流し来(きた)るを拾得(ひろひうる)もの
あり其初生より全形(ぜんぎやう)和蘭の書物印忙に図あり初生は箬(ちまき)
葉(さゝ)に似(に)て三四葉互生す根に椰子(やし)を附(ふ)す老樹(ろうしゆ)は幹(みき)肥大(ひたい)
にして高く聳(そび)ゆ樹皮灰白色 処々(しよ〳〵)節(ふし)ありて羅紋(らもん)あり頂(いたゞき)に
【左丁】
葉を生す数葉(すうやう)叢生(さうせい)し其一葉は形 鰭(ひれ)の如(こと)くにして長(なか)く先四
五 尖(とか)りあり葉の本(もと)に花(はな)を生(せう)す二弁(にへん)相合ふ其一弁 荷(はす)の花
弁の如(こと)く開く時は中より穂(ほ)を生し数花欑生す四弁黄白色
なり実の大さ囲(めく)り一尺 長(なか)さ四五寸外皮は棕櫚をつかぬるか如(こと)し
皮(かは)を去(さる)るとき殻(こく)堅(かた)く厚(あつ)く羅紋(らもん)ありて本に三孔あり釈名(しやくめう)に
越王頭(ゑつわうとう)と云この殻(こく)を二ッに割(わり)て盃(さかつき)に作(つく)る殻中(こくちう)に肉(にく)あり白色に
して略(ほゝ)南蛮蝋(なんはんろう)に似(に)たりこれ椰子瓤(やししやう)也 其中(そのうち)は空(くう)にして水あり
これを椰酒又 椰子漿(やししやう)といふ又其中に桃実(とうじつ)の如(こと)き物あり是
椰心(やしん)なり椰子油(やしゆ)は蛮流(はんりう)の外科(けくは)多(おほ)く用ゆ荷蘭(をらんた)にてターテル
ヲーリー又カラツフルとも云これ核中(かくちう)の肉にして脂液の凝たる
ものなりこれを煎(せん)して油を採(と)り用ゆ能(よく)金瘡(きんさう)腫物(しゆもつ)の肉(にく)を
あけ癒(いや)す