翻刻
【左側上段】
て人皆な混雑(こんざつ)を極め居りしに因り、無賃にて入湯(にふたう)せしめたりと
いふ奇特(きとく)の行為と云ふべし。
▲義捐金 今回県下(こんくわいけんか)に於ける暴風の非常にして、其罹災民(そのりさいみん)の困
難を察せられ、救恤(きうじゆつ)として、公爵島津忠重家より金七百円を、
又玉里公爵島津忠済家にては金参百円を義捐(ぎゑん)せられ、真宗大谷
派本願寺総務大谷勝緑師よりも金五百円を寄附(きふ)せられたり。
●知事の告諭
今回の暴風(ぼうふう)は六十年来未だ曽(かつ)てあらざりし所にして、家屋(かをく)の倒(たう)
破(は)、人畜の死傷、船舶の難破流船等の夥(おびたゝ)しきこと、県下通じ
て前古例(ぜんこれい)なき大惨状を来たしたれば、本県知事は左(さ)の如き告諭
を発(はつ)して一般を戒めたり。
本月十四日の暴風雨は県下未曽有の災害にして人畜の死傷家
屋船舶の倒潰無数其状実に悲惨を極め救恤を要する者も尠な
からす就ては万一にも此災厄に乗し他の究迫をも顧みず米穀
又は木材等の如き必需品をして其価格を暴騰し以て奇利を貪
らんとするが如き行為無之様注意すべし
●兵庫県下の暴風雨被害
八月二十八日兵庫県下に於て播(ばん)、但(たん)、丹の三地方に亘り。風伯
雨師の暴威(ぼうゐ)を逞うせし跡。西播地方を中心(ちうしん)として播州一円乃至
但馬半国(たじまはんこく)。丹波の南方に印せり。是日の風力(ふうりよく)は頗る疾速にし
て。各地を通じて午後六時|過頃(すぎころ)より十一時を過ぐる頃まで。最
も猛烈(もうれつ)を極めしが。当時何れも電信不通(でんしんふつう)なりしため。其実況を
知るに由なかりしが。翌二十九日午前より被害(ひがい)の飛報。兵庫県
庁及警察部に達するもの頻々絶(ひん〳〵た)えず。是に於て兵庫県庁より属(ぞく)
官(くわん)及び保安課長を但馬八鹿地方へ。小崎警部を播磨地方(はりまちはう)へ実況
取調として出張(しゆつちやう)せしめたり。又西播の被害地赤穂。宍粟の両
郡よりは。書記(しよき)各一名宛を兵庫県庁に派して。救助のため備荒
【左側下段】
備蓄金支出を要求(えうきう)するなど。実に今回の風害(ふうがい)は五十年来見ざる
所なりと西播地方の人々は言ひ合へり。今各郡市より兵庫県庁(ひやうごけんちやう)
及び警察部へ報告し来(きた)れる被害取調表及其内被害最も甚(はなはだ)しか
りし赤穂郡各町村別のものを記(き)すれば左の如し。而して兵庫県
にて各郡被害(かくぐんひがい)の多寡に応じて救助の為罹災基金(ためりさいききん)を支出する其総
額概算二万五千円|程(ほど)なりといふ。右に関し大森同県知事は県令
第四十八号|罹災救助基金救助規則(りさいきうじよききんきうじよきそく)。訓令第八十四号同規則取扱
手続告示第二百三十九号同基金管理及ひ支出方法等を発布(はつぷ)し
たり。
郡市 人 畜 家 屋 其他建物
死 傷 死 傷 全潰 半潰 破損 焼失 全潰 半潰 破損 焼失
人 人 頭 頭 戸 戸 戸 戸 棟 棟 棟 棟
神戸市 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
姫路市 ― 一 ― ― 八 二〇 三六七 ― 五三 四 二五 ―
武庫郡 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
川邉郡 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
有馬郡 ― ― ― ― 四 ― ― ― ― ― ― ―
明石郡 一 一 ― ― 四四 一三 一〇〇五 ― 五七 六一 五四 ―
美嚢郡 ― 一 ― ― 六九 二 ― ― 一三 ― ― ―
加東郡 三 四 ― ― 七八 七九 ― ― 四八 九 ― ―
多可郡 ― 三 ― ― 一〇〇 一八〇 四六〇 ― ― ― ― ―
河西郡 ― 一 ― ― 一一七 ― 八四 ― 五三 ― 三 ―
加古郡 三 三 ― 一一 二〇五 一六四 四一三 ― 一八二 ― ― ―
印南郡 二 八 ― ― 一五八 二一二 四二三 ― 九三 七一 八五四 ―
飾磨郡 四 一一 七 一一 三一〇 四八五 ― ― ― ― ― ―
神崎郡 四 一七 ― 三 三〇八 五二五 八八五 ― 一八八 五一五 二〇〇 ―
揖保郡 一三 一六 ― 二 五一七 九 三六五 ― 四七五 一二 二〇 ―
赤穂郡 二八 四八 二〇 ― 八二〇 五五六 一六七一 一四 七二九 二四七 一四〇〇 八
佐用郡 二 一四 ― ― 三二〇 ― ― ― ― ― ― ―
宍粟郡 九 一三 一 二 三二六 二六九 一一七八 一 一一六 一三 一八六 ―
城崎郡 ― ― ― ― 二〇 ― ― ― ― ― ― ―
出石郡 ― ― ― ― 二 五 ― ― ― ― ― ―