翻刻
えるにやあらんといひけり其後 住寺(ぢうし)へ弥介此事を
つぶさに語(かた)りけれは住寺聞てふしぎにも有難(ありがた)き
事かな蛇(へひ)は世(よ)の人の憎(にく)む所 悪念(あくねん)深(ふ)【「か」が欠損?】きものも
又 仁愛(じんあい)を知(し)る事いかさまにも千変万化(せんべんばんくわ)の世(よ)なり
とて深(ふかく)感(かん)じて寺の後の山 際(ぎわ)へ祠(ほこら)を建(たて)ら?れ
て蛇のほこらとて今もありとぞ
怪談御伽わらは巻一終
現代語訳
えるのであろうか」と言った。その後、住職のもとへ弥介がこの事を詳しく語ったところ、住職は聞いて「不思議にも有り難いことだな。蛇は世の人が憎むところで、悪念の深いものでもあるが、また仁愛を知ることもある。いかにも千変万化の世である」と言って深く感動し、寺の後ろの山際に祠を建てられて、蛇の祠として今もあるということである。
怪談御伽童 巻一 終