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凌(しのぎ)暑(しよ)を避(さくる)の用(よう)に備(そなふ)るのみなり然(しかる)に是が為に区(く)々として細(さゐ)
行(こう)を謹(つゝしみ)心を縮(ちゞめ)身を検(くゝら)んは所謂(いはゆる)五斗米(ごとべい)の為に膝(ひざ)を屈(くゞむ)るとな何(なん)ぞ
異(ことな)らん封禄(ほうろく)を捨(すて)て他邦(たほう)に走(はしり)心にて適(かなふ)行事(かうじ)を為(なし)楽(たのしん)で生(せい)を遂(とく)
るにしかじと量見(りやうけん)を定(さだめ)けるが又思ひけるは我(われ)禄(ろく)を捨(すて)て当所(たうしよ)
を立 退(のか)ば復(ふたゝび)帰(かへり)来るべき期(ご)なし密(ひそか)に立 退(のかん)も無念(むねん)なれば故郷(こけう)を
去(さ)るの名残(なごり)に興(きよう)ある挙動(ふるまひ)をなして走(はし)るべしと工夫(くふう)をなし翌日(よくじつ)
早(はや)く出仕(しゆつし)して敏家卿の前(まへ)に出 某(それがし)不肖(ふせう)にして憍慢(ほしゐまゝ)なる界(けう)
境(がい)に数年(すねん)を送(をく)り数々(しば〳〵)御 意(こゝろ)に忤(たがひ)しを宥免(ゆうめん)あるのみならず今(この)
今(たび)抜群(ばつくん)の封禄(ほうろく)を賜(たまは)るは憚多(はゞかりおほく)も族籍(ぞくせき)の端(はし)を汚(けがす)を思召ての哀(あは)
憐(れみ)と肝(きも)に銘(めい)して難有(ありがたく)候 向後(けうかう)は仰に従(したが)ひ万事(ばんじ)を謹(つゝしみ)可申候よつて
今日は洪恩(かうおん)の万一を報(はう)じ奉るべき為 茅屋(ばうをく)にて麁茶(そちや)献(けん)じ度