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【右ページ上段】
渫船は、前日(ぜんじつ)より丸山台の南手に碇を居けるに、大風(たいふう)に吹き送
られて、稲荷新地圓月楼の店(みせ)の前(まへ)に尻を据へて動かず、漸く風
の死ぎを待ちて、南の方に突き出し、錨(いかり)を卸(おろ)してかけ止めた
り、其他松(そのたまつ)が端菜園場等(はたさいえんばとう)の堀川に繋ぎたる平舵船は、悉く往来
へ打ち上げられたり。又大川筋(またおほかはすぢ)七軒町の西の方にて、大船一艘
往来(おうらい)に突き坐はるを見(み)うけぬ。
▲船舶の転覆と破損 水上警察署(すゐじやうけいさつしよ)の報告によれば、大暴風雨に
浦戸港内船舶の転覆(てんぷく)幷に破損数は左の如し。
転覆和船 帆船五艘、小船二十艘
破損和船 帆船十五艘、小船五十艘
破損汽船 一艘
▲伊野町の被害 伊野町にては、前両度(ぜんれうど)の風水害の為め、多少
の被害(ひがい)ありし中に、取分け去月九日の大水に際(さい)しては、困難一
方ならざりしも、人畜(じんちく)の死傷(しゝやう)、家屋の流失破損等の憂もなく、
別に之と云ふ程の惨毒(さんどく)を蒙らず、家財の如きは、其(そ)の当時(たうじ)に於
て、悉く二 階又(かいまた)は其他の場所(ばしよ)に始末して、近日まで其儘に
為し置きたる処、廿八日の夜に至り、突然(とつぜん)の暴風雨に出逢(であ)ひ、
瞬く間に屋根(やね)を破られ、壁を吹き抜かれし為め、家財家具の類
は大抵(たいてい)皆雨に濡され、風に浚(さら)へられ、其困難名状すべくもあら
ず、其損失も亦益々多きを致せりと。
▲伊野警察署の調査 に拠れば、圧死男二人女二人、木片に打
たれて死したる者一人、負傷者男五人女七人、溺死牛一頭、全倒
家屋八百二十三軒、同納屋二百六十三軒、半倒家屋三百九十七
軒、納屋四十一軒、破壊帆船七艘なり。
当夜仁淀川の水量(すゐりやう)は、昼間より引続き降雨ありたるにも拘はら
ず、平水(へいすゐ)よりは凡そ七八尺の水嵩なりし故、陸上浸水(りくじやうしんすゐ)の憂ひ
なかりしは先づ何よりの仕合なりし、兎も角 同町(どうちやう)の戸数千三百
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余の中に在りて、被害(ひがい)の最も大なりしは、字「藤沖」と云へる紙
漉又は紙商(かみしやう)の最も多き所にて、同町の家屋(かをく)は大抵全倒又は半潰
れとなりたり。
▲香美郡 野市村に於ける被害(ひがい)は左の如し。
去る廿八日の暴風(ぼうふう)の為め、家屋全倒の者二十八軒半倒の者四百
六十七戸其他神社山林倒木多々あり、為に神室(しんしつ)の傷害等 甚(はなはだ)し
く、稲作(いなさく)に付ては平均(へいきん)一反歩に付四斗位の損害を受けたり。畑
作其の他芋果物は皆無にして、家屋(かをく)の損害等(そんがいとう)と合算すれば、其
損害平均(そんがいへいきん)一家屋に付五十円に及び、古来未曾有の暴風たりし、
又同尋常高等小学校一棟避病院雪隠一棟全倒是に伴ひ破損せし
学校病院(がくかうびやうゐん)の棟数十一棟あり、
▲赤岡警察署 よりの報に拠れば、同署所轄内上韮生村字久保
に於て、暴風(ぼうふう)の為め火災あり、女一人焼死す、全倒家屋は夜須
にて八戸、野市にて十七戸、佐古にて十一戸、吉川にて十戸と
ありたり.。
▲安芸郡 安芸郡の被害は、風害よりも寧(むし)ろ怒濤の為めに、海
岸道路の決潰(けつくわい)せるものを多しとし、其間或は家屋の倒壊せるも
の無きに非ずと雖も、多くはこれ漁戸蜑家、粗造(そざう)なる茅屋等に
止り、全体に於ては、他(た)の諸郡(しよぐん)に比して、其の被害頗る多から
ず、其怒濤の為めに道路(だうろ)を洗(あら)ひ去られて、人馬の通行を断つに
至りたるは加領郷及び安田近傍を最とし、其他 沿海(えんかい)の諸村之に
次ぐ、而して室戸岬以東(むろとみさきいとう)は殆むど風害の災を知らざりしとい
へり。
▲室戸村 大字元新村海浜に引揚(ひきあ)げありたる漁船(ぎよせん)十四艘は風の
為め吹き飛ばされて微塵(みじん)に破壊(はくわい)せり、其他家屋の傷みも亦少な
からず。大字浮津海浜に引揚げありたる漁船一艘数十丁の西に
流され、捕鯨会社裏手(ほけいくわいしやうらて)の門下にて止り、少破損を蒙むり、其他
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兵庫県舞子の浜列松推倒の図
高知市に於て南駿馬方雇女電燈線に触れて惨死する図
高知県吾川郡浦戸村字桂浜被害の図