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コレクション: STAGE3

安政風聞集 上中下 全 - 翻刻

安政風聞集 上中下 全 - ページ 24

ページ: 24

翻刻

 本尊(ほんぞん)を出(いだ)し参(まゐ)らせんとて御厨子(ミづし)より取出(とりいだし)し奉(たてまつり)り籠(こも)れる人々(ひと〴〵) 供奉(ぐぶ)なして  対面所(たいめんじよ)の方(かた)へ立退(たちのか)せ奉(たてまつ)りたる其程(そのほど)もなく御本堂潰(ごほんどうつぶ)れたることいと不(ふ)思  議(ぎ)なる事といふべし予が友何某(ともなにがし)なる人風後(ひとかぜご)三日を過(すぎ)て序(ついで)あれハ御門(ごもん)  跡(ぜき)の本堂潰(ほんどうつぶ)れし噂(うハさ)を聞(きゝ)て立寄見(たちよりミ)るに数十万(すしふまん)の老若男女潰(らうにやくなんによつぶ)れたる御  本堂(ほん)の瓦(かハら)を下(おろ)す形勢或(ありさまある)いハ肩衣角隠(かたぎぬつのかく)しを身にまとひ頭(かしら)にいたゞき本堂(ほんどう)  より一町斗(いつちやうはか)り隔(へだて)たる置場(おきば)まで銘々手(めい〳〵て)に手を次(つぎ)て順送(じゆんおく)りに運(はこ)べるさまその  列(つらな)れる人々十有余筋(ひと〴〵じういうよすじ)に立並(たちなら)び殊更瓦(ことさらかハら)ハ一枚(いちまい)ッゝ 故老少是(ゆゑらうしやうこれ)を運(はこぶ)ふに労(らう)せず  又家根板打散(またやねいたうちちり)たる竹木類(ちくぼくるい)の積上(つミあげ)たるを夫々(それ〴〵)に差別(しやべつ)して縄(なハ)にからぐる者(もの)も  ありて其群衆幾千人(そのくんじういくせんまん)といふを知(し)らずさながら蟻(あり)のつどへるに似(に)たり然(しか)  のミならず信者(しんじや)より御冥加金(ごミやうがきん)と号(なづけ)て張札(はりふだ)に姓名(せいめい)をするしさゝぐる者  十金以上数多見(じつきんいしやうあまたミ)へたり又施主(またせしゆ)の名(な)をしるさずして推(さゝぐ)る金高(きんだか)ハ張出(はりだ)し  よりハ十倍(ぢふばい)せりとぞ実(じつ)に此宗(このしう)の繁昌思(はんじやうおも)ひ知(し)るべし ◯ 鉄炮洲(てつはうず)ハ湊町家損(ミなとちやういへそんず)る事夥敷船松町(ことおびたゞしくふなまつちやう)ハ壱丁半程高汐(いつちやうはんほどたかしほ)に引(ひき)ゆかれ其 行方(ゆきがた)しらざるも多(おほ)し又佃嶋(またつくだしま)ハ西町一丁悉(にしまちいつてうこと〴〵)く破損(はそん)して住吉明神(すミよしミやうじん)の違木(ちぎ) 吹散(ふきちつ)て見(ミ)えず永代橋中程(ゑいたいはしなかほど)より東(ひがし)の方七八間風破(かたしちはちけんふうは)に押流(おしなが)され大船(たいせん)の為(ため) に打落(うちおと)され又西(またにし)の方(かた)へよりたる橋杭(はしくひ)一こま打抜(うちぬか)れて往来止(わうらいとま)り船渡(ふなわた)し となる又大川端菅沼秋元佐野破損多(またおほかハばたすがぬまあきもとさのはそんおほ)く安藤屋敷前(あんどうやしきまへ)より大橋までの 往来(わうらい)へ大茶船(おほちやふね)十二三 艘打上(ぞううちあげ)三四百 石積(こくづミ)の船砕(ふねくだけ)て艫(とも)の方ばかり吹上帆柱(ふきあげほはしら)ハ 箱崎(はこさき)へ上る其外 橋杭三本破損(はしくひさんぼんはそん)の船大道所々(ふねだいどうしよ〳〵)に散乱(さんらん)したり ◯ 浜町(はまちやう)ハ酒井水野間部公其外小屋敷多(さかゐミづのまなべこうそのほかこやしきおほ)く損(そん)す此辺も高汐来(たかしほきた)り床上(ゆかうへ) 二尺四五寸上る竈河岸火(へついがしひ)の見家根飛失(ミやねとびうせ)て行方を知(し)らず松嶋町悉損(まつしまちやうことこゞくそん) じ強(つよ)く人形町通りハ格別(かくべつ)の事なし