翻刻
売身葬父
漢董永家貧父死売身貸銭而葬及去償工途遇一
婦求為永妻俱至主家令織縑三百匹乃回一月完
成帰至槐陰会所遂辞永而去
漢(かん)の董永(とうゑい)は家(いへ)まづしくしてちゝの死たるにほうむること成かたく其身(そのみ)をうりてその
あたひをもていとなみおはり其後(そのゝち)身をうりたる方(かた)へ行(ゆく)みちにてひとりの婦人(ふじん)にあふ
婦人(ふじん)えいがつまとならんといつて共(とも)に身(み)をうりたるあるしの家に行(ゆき)縑(けん)とてすゞし【注①】の
たくひのをりものを三百むら【匹 注②】一月 斗(ばかり)にをり身をうりたるあたひにあがなひ夫婦(ふうふ)
うちつれて帰(かへ)る婦人(ふじん)さきにえいにあひたるゑんじゆの木(き)のもとにいたりついに
いとまをこひいつちともしらすさりにけるえいか孝行(こうかう)を天(てん)のかんじてかくたすけ給ふ也
【注① 生糸を織ったままで練っていない絹布。軽くて薄い】
【注② 布二反分を一巻にしたものを数える語】