翻刻
齧指痛
周曽参字子輿事母至孝参嘗採薪山中家有客至
母無措望参不還乃齧其指参忽心痛負薪以帰跪
問其故母曰有急客至吾齧指以悟汝尓
周(しう)の曽参(そうしん)あざなは子輿(しよ)孔子(こうし)の門人(もんじん)にて母につかへて孝(こう)なり参(しん)つねに薪(たきゞ)を
山中(さんちう)に採(と)るたま〳〵家(いへ)に客(かく)のいたるありはゝ参(しん)がるすなれは其客(そのかく)を待(また)しめ
すなはちわか指(ゆび)を齧(かむ)参(しん)山中(さんちう)にてたちまち心(しん)いたみはゝをあんじていそき
帰(かへ)り其(その)ゆへをとふはゝいはく客(かく)の来(きた)るありそのゆへわか指(ゆひ)をかみて
なんじのもとらんことをほつすと骨肉(こつにく)の情(じやう)道(みち)をへだてゝも心(こゝろ)のつう
ずる事かくのことし参(しん)か孝(こう)しんをかんずへきにあまりあり
《割書:附ていふ題やうみな四字なりこの題字|原本三字おそらくは心の字をかきおとし》
《割書:たるならんか》