翻刻
端唄寝〆色糸(はうたねじめのいろいと)中の巻
傘(かさ)の雪(ゆき)
我(わが)ものと思(おも)へばかろし傘(かさ)の雪とは人(ひと)として欲情(よくじやう)のはなれざる
事(こと)風雅(ふうが)の上(うへ)にもしかありと古今(こゝん)万事(ばんじ)をつらぬく一句(いつく)そを
色欲(しゝよく)にとりなして恋(こひ)の重荷(おもに)とつゞけしは是等(これら)をはうたの生(しやう)
根(ね)といふべしいもがり行(ゆけ)ばは妹許(いもがり)と書(かき)て女の許(もと)へ行事とは
いはずとみなさま御推(ごすゐ)もじ川風さむく千鳥なくほどいづれも
冬(ふゆ)の余情(よじやう)深きは今日(けふ)の大雪 君(きみ)を思へはかちはざしことはいへども
まさかはたしで色に行(ゆく)のも
あんまり色気(いろけ)のすたつたせん
さくなれば鉄紺(てつこん)の半合羽(はんがつぱ)
に小袖(こそで)三枚(さんまい)ぱつちしりはし
をりの高足駄(たかあしだ)蛇(じや)の目(め)の傘(からかさ)
にふりつもる雪も他(よそ)の囲女(ていけ)を
我(わ)ものとおもふ心(こゝろ)よりは重(おも)し
とも思はすこゝがそのわがものとおもへばかろし傘(かさ)の雪(ゆき)つもり〳〵て
【絵の中】
我恋は
住よし
うらの
夕けしき
たゞ
あをた
まつばかり
逢ふて
つらさが
かたり
たや