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コレクション: アジアの映画関連資料アーカイブ

デンキカン・ニュース - 翻刻

デンキカン・ニュース - ページ 3

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週刊 デンキカン.ニユーズ 第九十三号 (五) 【右頁上段】  内外              〓坊    チヤプリン氏第五回作品 永らく発表されざりしチヤーリー、チヤプ リン氏新作品は、去る九月一日フアースト ナシヨナル社を通じてその契約せる五つの 映画の最後として『若者』"The Kid"を 公表既に撮影に着手せり。    早川雪洲氏新作品来る 一九一九年八月ロバートソン、コール社を 通じて発売されたるハウオース映画早川雪 洲氏作品『血の力』"The Gray Horizon" は最近日活社に輸入さる。ヱイリン、パー シイ嬢青木鶴子嬢等共演す。 "THE GRAY HORIZON" in 5 Reels By Clifford Howard, Directed by Wm. Worthington Marata【Masata】 Yano......Sessue Hayakawa Jhon【John】 Furthman......Bertram Grassby Doris Furthman......Eileen Percy O Haru San......Tsuru Aoki Robert Marsh......An【反転】drew Robson    ヱス、ハート氏作品 既に全作品を輸入せるアートクラフト社名 優ハート氏次回の上場映画は『人道の為に』 "Breed of Man"に名花シーナ、オーヱ ン嬢を相手に荒原アリゾナに活躍す。  "BREED OF MAN" in 5 Reels  By J. G. Hawks, Directed by William S. Hart,   Supervision of thomas H. Ince "Careless" Carmody......Wm. S. Hart【反転】 Ruth Fellows......Seena Owen Wesley B. Prentice......Bert Sprotte Bobby Fellows......Buster Irving 【右頁中段】    慶応と早〓【稲】田に 前回の快漢レイ氏『野球劇』上映に際し深甚 なる御声援と共に或は団体観劇に音楽に便 宜の労を忝ふしたる慶応、早稲田の諸子に 特に三田新聞学会早稲田音楽部同人の厚き 御後援を深謝す。      大拳小剣    適切であれ  (入賞)       清芳  『適切であれ』との語は映画劇を構成する 上に於ての必要条件である。生かすとも殺 すとも皆この一境界線によつて定まる。 外誌は次のやうに言ふてゐる『米国活界通 弊の芸術的見解力に乏しいのは、延いては 劇に供する材料が一般に平凡であることを 立証するに足る。然しながら唯一の誇りと すべきは監督者又は技術者の智識の高いと 言ふ一事である』と。然り!監督者は全く立 派である。然し俳優自身をその犠牲とする ことは問題であつて、且必ず破綻を生ずべ きものであると推測する。  之を前提として『仮面の人』より見たるウ オールサール氏を考察する時は加【「如」の誤植か】何?乃ち 恁うした欧洲戦乱より題材を採つた極めて 動的要素に勝つたプロツトには、氏の如き 深刻味ある静的な性格者の耕すべき畑でな い。従つて氏自身の真の個性を認むるに不 充分である。  畢竟ずるに監督者が自己の権威のために 【右頁下段】 氏を許容する立脚点を誤つたものである。 然し氏はベストを尽して作者及監督者の現 さんとした気分を傷けまいとした形跡が歴 然と見出される。想へば『悲しき一夜』に光 彩を放ちたるグリフヰス氏の見る眼は、彼 ウオールサール氏に適切であつた。    麗しい真実‼            森広松水  腑甲斐ない自己の破滅が野生的であつた ローン、ウルフに諒察が出来た時……彼の 真理は確然と熱意ある見解が考証される様 にあつた。そして豊麗な人生の温みに包ま れる様に自然と自己の身に辿つて行く。  ローン、ウルフが妹の怨を晴らすべく敵 地より安全な地に逃げのびて来た、彼が真 実は絶対的の色となつて彼が面に現れてゐ た。そして或日の事、不思議な乙女に奇蹟 的な依頼を受けた。彼の温明な心この不審 な依頼は、非常な幻怪さを彼に想痕させら れた、その不可解さは彼が求めた――根底 の悩み――『恋』によつて解決された。 セシリアは極楽蝶の清純さを有つて真実に ローン、ウルフを恋してゐた。自然は両者 の知覚を合致させた。そして暁の陽の光の 様に、極めて神秘を語る永劫の融和を交換 させた。  明晰な興味が、画面全体に爛然として流 れ漂つてゐる。  ウオールサールの燦然たる先入的性格描 写は、極めて妥当した真の輝きである。そ して天賦の芸術の才が充分に見出し得るこ とが出来る。  私は、ウオールサールを適確的に推賞し 得る真実の俳優であると云ふ、 【左頁上段】    二つの感じ            溜池の蛙  氷の針の様な北風の吹く冬の夜、胡椒の 強いのをなめた時の感じは、ウイラツト氏 の映画を見た時のそれで、冷い中にピリツ とした鋭い反応がある。軟い南風の吹く春 の日、太陽の下に寝ころんで嗅いだ薔薇の 香の感じは、ストーム氏の映画を見た時の それで、暖い軟い中に心をホーとさすだけ の強さがある。  どつちがいゝか?私はどつちも好きだ! 『仮面』に於て『野球戦』に於て、私は心ゆく まで味はひ且嗅いだ。それなら『仮面』では 何処が冷い冬の夜で何処が強い胡椒か。そ れは全部が冬の夜で全部がピリツとする胡 椒だ。探偵が踏ん込んで独探を捕へた一場 の活劇の如きは、最も冷い冬の夜の凄惨な ところだ。終りに主領の死骸を見せ、独帝 の額の顔を破つたのは胡椒の味だ。且胡椒 の素晴しく利いてゐたのはウルフとヱスク トムの格闘のシーンの序幕だ。ウルフをレ ンズから外らすや一個の椅子を飛ばし、置 物を砕いた巧みさは、起るべき争闘の物凄 さを示して鋭かつた。  『野球戦』は春雨に濡れた柳の葉の柔かみ があつた。柔かいが核があつた。場面毎に 温味があふれて、如何にもよく田園気分が 現はれてゐた。そして何処にも薔薇の香の 馥郁たるものがあつた。ベンが牛を引いて 来る黄昏の景は、樹木と人と光線が十二分 に巧妙に用ひられて、美しい絵を描き出し た。汽車を撮すにも柳を配して絵画化した のはストーム氏の味だ。都の野球戦と、田 舎の野球戦と自ら異つた感じの起るのは、 即ち薔薇の香の最も高いものである。 【左頁中段】  さて久し振りで見る独逸物の、次に出る 『ヴヱリタス』は、どんな味ひどんな香りを 有つてゐるだらう。    嵐のあと            徳司  嵐は夜の中に止んだ。 朝の輝かしい気分は神の呼吸のやうにゆる やかに流れて居る。地は肉の様に温かい。 空は血のやうに赤い。  期待を満足せしめた悦楽の日………嵐が 過古の塵芥を流し去ると同様に、清い牧師 の美しい銀滴の流れによつてハーデングの 過古は去つた。輝かしい前途の光明が見え た――覚醒した彼の本塁打は、村の名誉と 娘マツジーを得せしめた。天高くして夕陽 が母山の中から血の残光な雪間に走らせて 天地が生熟と緊長と典雅に彩られる頃、此 余韻の中に二人の前途の輝きと観喜……愛 着に燃ゆる唇が楽しいスイトホームを囁い た時、青い鳥や赤い蝶々が合唱された。  私はこんな清い何処までも生と云ふもの からスタートしたインスピレシヨンを覚へ たことはない。それはあの朝の清い感じに 勝るとも劣らぬものであつた。    感歎余つて初見参            もとじ  諸君の精鋭なる批評の中へ私等が首を突 出す事は余りに乱暴であるかも知れない。 然しDの奮闘の副産物として余儀なくされ たのだ。勿論熱の上つたフアンのタワゴト に過ぎないのである。然もその初見参にウ オールサルの深刻に触るゝに於てをや。 『仮面の人』に依つて初めて入神の業てふ 【左頁下段】 語の存在を知る。それ程彼の映画は偉大で あつたと私は自信ずる 凄愴な戦時をパツ クに、眼醒めたる彼の前には金もなかつた 宝名もなかつた。たゞ国のためと妹の復讐 あるのみ!敵地を逃れ、船中にセシリアを 救ひ、エクストロムを仆し、重要書類を奪 還し……恋を得て、人生の意義を悟る。 その経路に於けるウオールサルの性格描写 の鋭さ!思はず眼を覆はしむる。偉大なる 彼の芸術は確に成功してゐる。然し私はそ のヱピソードを私の心象の面に描き出した 有の尽【儘】を、たゞ矢鱈に立体的に記したに過 ぎない。事実はよりもつと深刻で物凄い映 画でなければならぬ筈である。    芸術の泉よ            紅二郎  芸術家と言ふ者を見るのは、私にとつて 可成精神的に苦痛なことである。  芸術家の容貌は如何にそれが精神的であ るか。また如何に物質を離れて居るか。チ ヤニーやウオールサルがそれである。その 両者の猛烈なる心理描写と性格描写によつ て『仮面の人』は充分価値付けられてゐた。 彼の芸術を語るに足る力作であつた。  ウオールサルの独創的天才的芸風はこの 映画の全巻を通じて、チヤニーの過度の顔 面描写とくつきり意気が合つてゐた。  野球劇は平凡な映画と云ふ言葉に余りに 相応しい憾みがあつた。然し血が躍るほど 壮快なドラマだつた。熱心なる修養は成功 の頂に達し、怠慢は再び降る――と之が此 映画の中心であるある。痛快な男性的な― それを私は、Dのために祝福する。 【中央】 寄稿 歓迎    映画に関する論文や感想や批評や希望などの御寄稿を望みます    別に行数などに制限なく可成優秀なものを…………。(入賞毎週一章)           D坊           独歩 大正九年十月一日発行  定価一部三銭郵税二銭        発行編輯兼印刷人  森田勝祐      浅草公園六区三号八番  デンキカン社              電話下谷三六二二・五七七七 (六) 週刊 デンキカン.ニユーズ 第九十三号