翻刻
早(つとに)発(はつし)_二交崖山(かうがいざんを)_一還(かへる)_二太室(たいしつに)_一作(さく)
崔署(さいしよ)
東林気微白(とうりんきびはく)。寒鳥忽髙翔(かんてうたちまちかうしやうす)。吾亦(われもまた)
自(より)_レ茲(これ)去(さつて)。北山(ほくざん)帰(かへらん)_二草堂(さうだうに)_一。杪冬正三(べうとうまさにさん)
五(ご)。日月遥相望(じつげつはるかにあいのぞむ)。粛々(しく〳〵として)過(すぎ)_二潁上(えいしやうを)_一。朧々(ろう〳〵として)弁(べんず)_二
夕陽(せきやうを)_一。川氷(せんひよう)生(しやうじ)_二積雪(せきせつに)_一。野火(やくわ)出(いづ)_二枯桑(こさうより)_一。
独往(どくわう)路(みち)難(がたし)_レ尽(つくし)。窮陰(きうゐん)人(ひと)易(やすし)_レ傷(いたみ)。々(いたむ)此無(このぶ)
衣客(いのかく)。如何(いかんぞ)蒙(かうむる)_二雨霜(うさうを)_一。 【印「譱靖」「松軒」】
《割書:今まで青(あを)〳〵とみへた樹(き)もさむそらに微白(びはく)とうすらげにみゆる鳥(とり)なども|どこへ行(ゆく)やら飛(とび)さる寒(さむ)くなれば鳥(とり)さへ居(ゐ)ぬに我(われ)も北山(ほくざん)の太室(たいしつ)へ帰(かへ)らん一日|路(ぢ)じやが今晩中(こんばんぢう)に帰(かへ)らんと道(みち)をいそぐ時(とき)といへば十二月十五日日月 相(あひ)のぞむと|云日じや帰(かへ)る道(みち)の穎川(えいせん)をわたれは粛々(しく〳〵)と身(み)のせまるやうに思(おも)はれ道(みち)のはか|ゆかす朧々(ろう〳〵)とうすぐらく日暮(ひぐれ)まであるく日(ひ)が入切(いりきつ)たりと考(かんが)へ弁(べん)ず|道(みち)はかゆかぬはづじや雪(ゆき)など上(うへ)から上(うへ)へつんてある埜(や)一 本(ほん)野(や)に作(つく)る|其(その)ときは百姓家(ひやくしやうや)で茶(ちや)ても煎(せん)ずる火(ひ)のこと農家(のうか)の庭(には)に桑(くわ)か種(うゑ)て|あるものじや内(うち)でたく火(ひ)が桑(くわ)のまばらよりみゆる野火(やくわ)といへば枯(こ)|木(ぼく)からしぜんに火(ひ)か出(で)るものじやいづれも旅(たび)のものさびしきていなり|つれもなくひとりゆけば道(みち)が尽(つき)ぬ十二月なかば陰気(ゐんき)のたゞ中(なか)故|人にもあたる我(われ)もとより無衣(ぶい)貧窮(ひんきう)の身(み)なればさむそらに霜(しも)を|蒙(かうむ)りさむさに堪(たへ)がたい》