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【右頁 上段余白 右横書き】
(2) =(金春週報)= お煙草は喫煙室で願ひます
【上段】
陰気な晩 妄想狂生
午後三時頃降しさ【ママ】る雨を冒してK館に向
ふ。残念!満員御断りと、何んだか癪に障
つた気味で、ふんと電車に乗つて降りた処
はAだ。Tに入つて三時間程居たが、嫌な
気持になつて出だ【た】、急にKが懐しくなつた
ので行かうと決めた。此れだけKが引力が
あるとは不思議だね。
ユ社の名監督レオナード氏の作品、金髪
はバイオレツトマアセローの如く筋肉の発
達はルイズ、グロームに似たるミーマレー
の「危険に付除【徐】行せよ」意味深長だね。
彼女の瞳は恵み深い女王様の様ですね、
虚栄姫のリネア、それはマレーでした。春
の夢を追憶しますよ、毛布を被つて、靴で
トン〳〵と叩いて知らせる所は永久に忘れ
られません。且つて偽を云はざりし人の前
で自分が女なる事を伯母さんに隠した事が
堪まら無くなつて、真実を示【ママ】げて、再びワ
シントンの画を見て、泣く瞬間の表情は賞
するに価ありますね。
彼女の最も得意とする、子供らしい、無
邪気さや、悲哀、又は情緒的なる気分は「私
は幾程に値を付けられるでせう。」でよく味
はう事が出来ませう。
近頃チニー君が大流行ですね、此度は快
活な青年、箱のイチゴを食べながら。見物
とは恐入りました。マルホール君は初めと
終りに一寸顔を出しただけ。
終りに、ピクチユアー、オラクレ欄の出
来たのを喜びます。
~~~~~~~~~~~~~
机に向つて 三田 松山香雪
孤島の娘、カーメル嬢独特の滑稽味を蔵
【中段】
する人情劇、殊にお名残の活躍と希望せる
に何たるプロツト、何たる演技、全くこれ
が堂々たる青鳥のスタンプを受けた作品か
と怪しまざるを得ぬ駄作であつた、最初興
行主の説明の際、本人の現はれぬこと、島
でカンニバルが出たり、ケリーがラーキー
を置き去るあたり、誠に了解に苦しむ点が
多かつた、以後覆轍の禍なからんことを。
闇の灯火、プリシラ嬢の適役劇をマレー
嬢があれまでに始終一貫せる芸風賞揚の価
値十分なり、されど嬢今やユ社に亡し、口
惜しき極なり、又々名優揃これ果して好影
響か将又然らざるか、それは、諸兄の御意
向に任せ、扨てこれ成功の力作。
"Danger Go Slon" 鉄道踏切の注意と世
上との連絡その着目点の妙味、原作者の俊
秀を喜ぶ、マグシーが牧師の説教とワシン
トンが "Who never tell a lie" に感銘し
良心の苛責に堪えかね将来に燈火、即ち闇
夜に燈火を得たる等教育的描写の発揮せる
ものがあつた、又雑貨店主がマグシーの係
蹄に掛るあたり、サラ叔母さんを楯に脅迫
的態度、ジムミーの門前にスペンサーを煙
に巻く場面、自役の性質を十分に咀嚼せる
表現、マレー嬢として比較的活溌なる演技
プリシラ嬢を想像させるに難くない、ロン
チヤニー氏が手先活動の大写原作に基いて
列車を見せるレオナード氏の監督上の法練
今更ながら驚嘆の眼を放つた、全篇監督と
俳優との統一妥協より成り殊にラストシー
ンの絞りはインス映画に良く見るものであ
る兎に角傑作たるを失はぬ最後に間奏「愛
らしき小娘」を謝す。
【下段】
コンパルの帰り
飯倉 華水生
K「矢張りドロシーはうまいね、何うだい
あの酒場に於ける処なんか……
S「テーブルの上に立つて呼ぶ処だろう…
あれを見るとモルガンの娘のローラを思
出すよ、……丁度同じやうな表情じやな
いか?……けれ共彼時から見ると今はづ
つと上手だね……
K「ストウエルも今度は今迄に無い様に巧
くやつたけれ共、僕の気のせいか知れぬ
けれ共、ジム青年としての弱々しき顔等
は全く感心したね、……けれ共今は死し
て此世の人で無いと思ふと残念な事した
よ、ドロシーも嘸悲しんだろう?
S「ストウエルには黄金の花のジムを以て
永久の別れとなるんだね、……死んだ人
が今眼前に動くとは、之文明の賜だよ、
K「深夜の人も愈よ終りだ……コーベツト
の目覚しかつたねヱ……とにかく第一編
から今迄の写真と変つた処が多かつたよ
……最後に二人(コ氏オ嬢)で表れ挨拶す
る所等……何うだい君‼
S「キツスカ?…若い我々には眼の毒だよ
K「今日の喜劇には驚いたね、……何だい
あれが喜劇だと聞くと、開いた口がふさ
がらんね、……丸つきりなつてないよ‼
S「如何に写真が面白くなくても説明を巧
くやつて呉れゝば未だいゝけれ共、両者
共なひと来るから………ヒカンするよオ
K「今日の黄金の花だつて、説明宜敷を得
て初めて満足出来たんだよ、……瀧田天
籟君の説明と来たら先づ此上なしだね…
S「とにかく今日のは確かに特別興行の値
打は有つたね。(三月廿八日昼)
【左右頁中間予告欄・枠】
【上段 右横書】
予告
【縦書】
テンペエスト・コデイー第二編
見込まれた家 全二巻
ユ社特作映画
正劇 飛行家の娘 全三巻
ドンナ・ドリユー醸【嬢】演
【中段 縦書】
特作映画
《割書:西班牙|情話》 火の女
金【全】六巻
ヘダ・ノバ嬢演
【右横書】
来る十七日
封切
【下段】
京橋区加賀町一七番地
《割書:編輯 発行|兼 印刷人》 渥美 鉄雄
発行所 金春週報社
毎土曜発行 電話銀座一六四六
【左頁】
【上部欄外 右横書】
休憩奏楽中はお静かに =(金春週報)= (3)
【本文上段】
見終つて 紫孤生
嫌な連続も終つて一寸息をつくかと思ふ
と又ラジウムの秘密か!所で僕が深夜の人
を見終つた今、是に就て一言したいのは、
深夜の人は僕にとつて近頃のシーリアル中
で先づ優秀なもの――少くとも好きな方だ
と言ひたい。何故か?
元来連続劇も可成以前迄はそのプロツト
に就て考へられたものだが現今は最早其に
就て云々する時ではないとは一般の輿論で
ある。即ち現今の千偏一律は何人も是認し
てゐるのだ。其点からみても、深夜の人は
多少その筋が変つてゐる(勿も矛盾も無い
ではないが)又幾ら長くとも十巻位ならと
思ふ物を三十六巻のと恐しく延長するのだ
から飽いてくるのも当然だ。其を飽かせな
い様にする所に所謂監督者の手腕を要する
訳である。即ち撮影、染色、場面転換或は
トリツクの巧用等。是等に就ても深夜の人
は遠写、腑観【ママ】、瞬間撮影を巧に取入れてゐ
たし、全体にシンミリした気分を漲らして
ゐたのではあの気持良い青染色が成功して
ゐたと思ふ。トリツクとても二三を除く外
先づ無難だつた。是等に加うるに出演俳優
の敏捷を以てして観客者をグン〳〵引付け
て行く所にシーリアルの生命が存する訳で
ある。此点から見て電光石火等も成功せる
連映の一であらう。要するに以上は、僕は
無意味に深夜の人を推称【ママ】するのではないと
云う事に就て一例をあげたに過ぎぬ。
兎に角僕が幾ら連映が厭だと云つても続
々上場されゝば仕方がない我慢しておとな
しく見やう。次のラジウム劇も――
【左頁中段】
休憩楽解説
ラ・トスカ (La Tosca)
ヂアコモ・プチニ作
(解説)ラ・トスカはプチニの第五の歌劇に
て、其の「お蝶夫人」についで有名な歌劇で
ある。この歌劇にはプチニの天才が最もよ
く発揮されてをり、劇中の人物の其の地位
とをよく了解して楽器及声楽が最も巧みに
用ゐられてをり、物語に大なる効果が与へ
られてをる。洵に音楽と劇的製素とがよき
平衡を得て、最も完全な芸術品であり而し
て、美しいのみならず、力と深さに富んだ
ものである。ラ・トスカが劇と音楽の融合の
点に於てヴエルデイ以後、伊太利の産んだ
世界的最大の歌劇と云ひ得るものである。
【嵌め込み枠の広告】
【上部横書右から読む】
一部金二十銭
【縦書き】
階上売店にあり
【枠内枠 大きな活字で縦書き三行】
号一号と発展する
キネマ旬報
を是非御購読下さい
【枠内枠外左側 縦書き】
女給にお申付下さい
【広告枠最下段 横書き右から読む】
本郷黒甕社
【本文】
第一幕 聖アンドレア寺院の場
画家カブラドシは壁画装飾の為に、寺院内
にて画板に向つてをる。そして名も知れぬ
美しい参拝者の祈祷の姿をモデルにしてゐ
た。此寺院にて彼は其恋人のフロリア・トス
カと逢ふ事になつてゐた。突然其処へ国事
犯で破獄して来たアンジエロテイが入り来
る。画家は友人なる事をみとめ、彼をかば
【下段】
い、其邸宅に送る。其処へトスカ入り来る
人の気配か【ママ】するのでトスカは嫉妬心を起こ
す。時しも砲声聞こゑ、脱獄の旨が知らさ
れる。警視のスカルピアが入り来る。彼は
カヴアラドシを共犯者と欵【ママ】ふ。内々トスカ
に恋してゐたスカルピアは画家とトスカの
間を裂かんとして、カブアラドシの破滅の
計画をたてる。
第二幕 スカルピア官邸の一室
スカルピアは画家を逮捕せんと命令を発す
そして画家をとらへ彼を栲【拷】問にかけて、其
友アンジエロテイの隠れ場所を知らんとす
る。栲【拷】問の場にトスカを連れ来り、トスカ
をして、云はせやうとする。恋人の苦む様
に堪えかね、トスカはアンジエロテイの在
処を云ふ。マリオは獄屋に縛がれる、スカ
ルピアは「自分を愛さなければ、恋人を死
刑にする」と云ふ。トスカはスカルピアの
言に従ふ。そして翌朝偽りの死刑を行ふ事
とする。トスカはスカルピアより保釈の書
類を受けとるや、スカルピアを刺して恋人
の下に走る。
第三幕 城外銃殺執行場
偽りの死刑が行はれた。然るにトスカは、
たほれたるカヴアラドシの下に走つて抱き
起せば、偽りどころか、真の死刑であつた
折から、兵士等はスカルピアを殺したりと
てトスカを捕らへんとして来る。トスカは
此の様を見て城廓の胸間から身を投じて自
尽する。
かくして悲劇は終る。(キネマ旬報より)
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