翻刻
橋(はし)京橋(きやうはし)新橋(しんはし)を経(へ)て金杉橋(かなすきはし)の辺迄(あたりまて)の総名(そうみやう)にして町幅(まちはゝ)十 間余(けんよ)あり
浮世小路(うきよしやうち) 室町(むろまち)三丁目の間(あひた)の東(ひかし)の横小路(よここうち)を云(いふ)されと其故(そのゆゑ)をしらす
或人云(あるひといふ)畳表(たたみおもて)浮世臥座(うきよこさ)商(あきな)ふみせある故(ゆゑ)にいふとも又は風呂屋(ふろや)遊女(いうちよ)の居(ゐ)たり
し故(ゆゑ)ともいへり
十軒店(しつけんたな) 本町(ほんちやう)と石町(こくちやう)の間(あひた)の大通(おほとほり)をいふ桃(もゝ)の佳節(かせつ)を待得(まちえ)ては大(たい)
裡(り)雛(ひな)裸人形(はたかにんきやう)手道具(てとうく)等(とう)の鄽(みせ)軒端(のきは)を並(なら)へたり端午(たんこ)には冑人(かふとにん)
形(きやう)菖蒲刀(しやうふかたな)こゝに市を立(たて)て其賑(そのにきは)ひをさ〳〵弥生(やよひ)の雛市(ひないち)におと
らす又 年(とし)の暮れ(くれ)に至(いた)れは春(はる)を迎(むか)ふる破魔弓(はまゆみ)手毬(てまり)破胡板(はこいた)を商(あきな)ふ
共(とも)に其市(そのいち)の繁昌(はんしやう)言語(けんきよ)に述尽(のへつく)すへからす実(しつ)に大平(たいへい)の美(ひ)とも云ん
かし 《割書:其余(そのよ)尾張町(おはりちやう)浅草(あさくさ)茅町(かやちやう)池(いけ)の端(はた)仲町(なかちやう)麹町(かうしまち)|駒込(こまこみ)抔(なと)にも雛市(ひないち)あれとも此所の市(いち)にはしかす》
時鐘(ときのかね) 石町(こくちやう)三丁目の小路(こうち)にあり辻源(つしけん)七といへる者(もの)是(これ)を役(やく)す此鐘(このかね)
初(はしめ)は御城内(こしやうない)にありしとなり 《割書:其余(そのよ)都城(としやう)の繞(めく)りに有(あり)て候時(こうし)を報(はう)する|ものすへて八ヶ所なり所謂(いはゆる)浅草寺(せんさうし)本所(ほんしよ)横(よこ)》
《割書:川町(かはちやう)上野(うへの)芝(しは)切通(きりとほし)市谷八幡(いちかやはちまん)目白不動(めしろふとう)赤坂(あかさか)田町(たまち)成満寺(しやうまんし)四谷天竜寺(よつやてんりうし)等(とう)なり| 》
銘曰 宝永辛卯四月中浣鋳物御大工椎名伊豫
藤原重休
【挿し絵】
祇園会(きおんゑ)
大伝馬町御旅所(おほてんまちやうおたひしよ)
五元集
天王の御旅所と
拝す
里の子
の
夜宮
に
いさむ
鼓
かな
其角