翻刻
なをし。にしきののうれん
かきあげて。あさひ天女(てんによ)は
きくかとよ。あしはらこくの
くはんきよが。たけをならすが
おもしろきに出てきけやと
の給へば。天女はきこしめして。
出まじき物とは思へども。父(ちゝ)の
仰にて有ければ。出ばやとお
ぼしめし。出たち給ふ御しや
うぞく。しげまきぞめ【注①】の花
のやうなるに。からまきぞめ【注②】
きくがさね。【注③】むらがさね【調べがつかず不明】このは
がさね【注④】やへがさね。【注⑤】からあやおり【注⑥】
【注① 繁巻染め=織物の染色法の一つ。巻き染め(絞り染め)の緒の数を多くして染め上げたもの】
【注② 唐巻染め=唐風の絞り染めという】
【注③ 菊襲(かさね)=襲の色目。表が白、裏が蘇芳のものをいう】
【注④ 仮想の襲の色。朽葉(くちば)襲からの連想か】
【注⑤ 八重重ね=八枚重ねの衣(きぬ)】
【注⑥ 唐綾織=公家の装束に用いる浮織物(うきおりもの)に対する通称】