翻刻
【右丁】
栝楼(くはろう)【注】 きからすうり《割書:王瓜《割書:からす|うり》に似て実|黄色なるゆえ名つく》 くそうり
武州(ぶしう)にては高田(たかた)煉馬(ねりま)【練馬ヵ】堀(ほり)の内(うち)大箕谷(おほみや)及(およ)ひ諸国(しよこく)にあり春(はる)宿根(ふるね)より蔓(つる)を生(せう)す葉(は)は王瓜(わうくは)《割書:からす|うり》に似(に)て
岐(また)浅(あさ)く淡緑色(うすみとりいろ)にして光沢(つや)あり葉間(はのあいた)に細鬚(ほそきひげ)を生(せう)し物(もの)に紆(まと)ふ夏月(なつ)花(はな)を開(ひら)く形(かたち)王瓜(わうくは)に似(に)て黄白(うすき)
色(いろ)鬚(ひけ)短(みじか)し後(のち)実(み)を結(ふす)ふ円(まる)くして両頭(れうとう)尖(とが)りあり大さ二寸 許(はかり)塩蔵(しほつけ)にして食(くろ)ふへし生(なま)は緑色(みとりいろ)熟(じゆく)すれ
は皮肉(かわにく)黄色(きいろ)味(あじは)ひ甘(あま)し中に子あり形(かたち)糸瓜(しくわ)《割書:へち|ま》の子の如(こと)くにて褐色(うるみいろ)これを割(われ)は仁あり淡糸色(うすみとりいろ)【糸は緑ヵ】扁(ひらた)く
して長(なか)く脂(やに)多(おほ)し是(これ)括楼仁(くわろうにん)なり豆州(づしう)三宅嶋(みやけじま)の産(さん)は殻(から)正円(まんまる)なり根(ね)は土中に深(ふか)く入(い)ること三四尺
皮黄白色にして皺文(しはもん)あり味(あじはひ)甘(あま)く大なるは臂(ひじ)の如(こと)く天花粉(てんくはふん)を製(せい)するには冬月(ふゆ)堀採(ほりとり)て水飛(すいひ)し
粉(こ)となすこと葛粉(くすのこ)と同(おな)し袋(ふくろ)に入(いれ)て推(おせ)はきち〱と音(おと)あるを真(しん)とす
【左丁】
王瓜(わうくは) 漢名一名 新羅葛(しんらかつ)《割書:邵武|府志》
からすうり たまづさ
人家 播籬(まかき)に多(おほ)くあり宿根(ふるね)より生(せう)す葉(は)は糸瓜(へちま)又 蛇葡萄(じやぶとう)《割書:のぶ|とう》に似(に)て深緑色(こきみとり)毛茸(け)あり別(へつ)
に細鬚(ほそきひけ)ありて物(もの)に纏(まと)ふ夏月(なつ)葉(は)の間(あいた)に花(はな)あり日 暮(くれ)に開(ひら)く弁は白 糸(いと)の如(こと)く秋月(あき)瓜を結(むす)ぶ熟(じゆく)
すれは紅色(あかいろ)中の仁 螳螂(かまきり)の頭(かしら)に似(に)たり根(ね)は括楼(くはろう)に似(に)て岐(また)あり製(せい)して天花粉(てんくわふん)に偽(いつわ)る
【注 「栝楼」「括楼」が混在。八行目、十九行目と目次(52コマ)は「括楼」。】
【五行十八字目「鬚」の振り仮名「ひ」は別の字(けヵ)の上から書き直した形跡有り】