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討(うつ)て弱(よは)きを扶(たす)け。将(はた)所々(しよ〳〵)に放火(ばうくは)せしめて。人民(しんみん)を恐怖(きやうふ)せしめんと。夫々(それ〳〵)に
手分(てわけ)分配(ぶんはい)を定(さだ)め。其日(そのひ)遅(おそ)しと俟居(まちゐ)たり
小串重意(をぐししけよし)が室(しつ)夫(をつと)を諫(いさむ)る話
于爰(こゝに)新宮弥次郎重意(しんぐうやじろうしげよし)といふ者(もの)あり。其原(そのもと)は熊野(くまの)の別当(べつたう)阿(あ)
闍梨定禅(じやりでうぜん)が嫡男(ちやくなん)なるが。其生質(そのひとゝなり)堕弱(たじやく)傲誕(ぞんざい)にして。父(ちゝ)の教誡(いましめ)他(た)の
諫言(かんげん)。さらに馬耳風(こゝろにかけず)して己(おの)が随意(まに〳〵)挙動(ふるまひ)しかば。自(おのづ)から非道(みちならぬ)ことの数回(あまた)
ありけり。父(ちゝ)定禅(てうぜん)。迚(とて)も別当職(べつとうしよく)を譲与(ゆづる)べき者(もの)ならずと。重意(しけよし)廿歳(はたち)と
いふ春(はる)これを義絶(かんどう)なして追遣(おつはら)半。重意(しけよし)初(はじ)めは中々(なか〳〵)心軽(こゝろかろ)しと。胆太(きもふとく)
も家(いゑ)を離(はなれ)て。彼(こゝ)に十日(しうじつ)爰処(かしこに)廿日(はつか)と日(ひ)を送(おく)りしが。実哉(けにや)金銭(きん〴〵)多(おほ)からざ
れは交(まじはりも)また厚(あつ)からずと。勢(いきほ)ひある定禅(でうぜん)が息(こ)なるが故(ゆへ)。自(おのづか)ら重意(しけよし)が無頼(ふらい)なる
を。人(ひと)も堪忍(たへしの)びて交(まぢはり)しかとも。いつしか人心(じん〳〵)頼(たのみ)なく。昨日(きのふ)まで兄弟(けうたい)の親(したし)み
なりし朋友(はうゆう)も。今日(けふ)は何(なに)となく気疎(けうと)き色(いろ)顕(あらは)れ。次第(しだい)〳〵に零落(れいらく)し。