翻刻
【右丁】
なんだか
もつたいないようだ
「かたつき見は
せぬものだといふ
から又
十三夜にも
こずアなるめへ
〔月ノ六〕
【左丁】
/武蔵野(むさしの)の/月(つき)の詠(ながめ)
/行末(ゆくすへ)は/空(そら)もひとつにむさし/野(の)の/草(くさ)の/原(はら)より/出(いづ)る/月(つき)かげをうち
すさびしい/限(かぎ)りなく/遠(とほ)きむかしの/事(こと)にして/今(いま)は/甍(いらか)の/建(たち)つゞき/月(つき)
は/軒(のき)より/軒(のき)に/入(い)る/繁花(はんか)の/土地(とち)の/有難(ありがた)さにはあくまで/栄耀珍味(ゑようちんみ)に
ふけりながら事/足(たら)ざりし/昔(むかし)をしたひいざ事/問(と)はん/夕(ゆう)まぐれ/隅田(すだ)のわた
りに/業平気(なりひらぎ)の/自惚(うぬぼれ)をおこし/都(みやこ)どりより/能(よ)き鳥もがなとあちこち
とうろつきても/秋(あき)の/夕(ゆう)べのならひこれはといふほどなさへた/事(こと)もなきなる
にも/只此頃(ただこのごろ)の/月(つき)のみさへたるを/見(み)て/例(れい)のむかしをしのび/今(いま)は/府中(ふちう)