翻刻
【右丁】
烏帽子島(ゑほししま) 同所(とうしよ)東(ひかし)の出崎(てさき)の小島(こしま)をいふ形状(かたち)烏帽子(ゑほし)に似(に)
たる故(ゆゑ)に名(な)とせり
鎌倉記行 ゑほし嶋(しま)といふはとはてもしるし
朝夕に浪よせ來ぬる烏帽子嶋置よりあらき風折やこれ 澤庵
夏島(なつしま) 同(おな)し東(ひかし)にあり長(なかさ)三町 餘(あま)り横(よこ)一丁 斗(はかり)の小島(こしま)なり
里人(りしん)云(いは)く玄冬(けんとう)の雪(ゆき)といへとも積(つも)る事(こと)なしといへり
鎌倉記行 夏嶋(なつしま)は名(な)のみなりけれ時(とき)は冬(ふゆ)なるは
三冬にも峰白雪のたまらぬはこや夏嶋の名にし消らん 澤庵
猿島(さるしま) 夏島(なつしま)の東南(とうなん)にあり五丁四方はかりあり
裸島(はたかしま) 同所(とうしよ)二三町はかり離(はな)れたる小島(こしま)なり
按(あんする)に澤庵(たくあん)和尚(おしやう)の鎌倉(かまくら)記行(きかう)に笠島(かさしま)といへる名(な)を挙(あけ)て其(その)詠(えい)に
かさしまや来てとふりの夕時雨たれた宿かす人しありやと
かくあれとも此地(このち)に笠島(かさしま)ある事をしらす恐(おそ)らくは猿島(さるしま)裸島(はたかしま)二島(にとう)の
中(うち)を聞(きゝ)たかへなとしてかくはいひたるならん欤(か)
【左丁】
甲香(かいかう) 此(こ)れは金澤(かなさは)の名産(めいさん)なり兼好(けんこう)法師(はふし)の徒然草(つれ〳〵くさ)に甲(かい)
香(かう)は螺貝(ほらかい)の様(やう)なるか小(ちひさ)くて口(くち)の程(ほと)の細長(ほそなか)にして出(いて)たる
貝(かい)の蓋(ふた)なり武蔵國(むさしのくに)金澤(かなさは)と云(いふ)浦(うら)にありしを所(ところ)の者(もの)は
へなたりとまうし侍(はへ)るとそいひしとあり野槌(のつち)に今(いま)金澤(かなさは)
にて尋(たつぬ)れはばいといひまたつふとも云(いふ)とあり
江戸名所圖會天璇之巻 終畢