翻刻
【右丁】
櫚木(りよほく) くわりん 花狸(くはり)#1《割書:広東|新語》#2 花欄(くはらん)《割書:典籍|便覧》
和産なし材(さい)は舶来あり木理(もくり)紫檀(したん)に似て紅紫色(こうししよく)堅(かた)くして気孔(きこう)
あり削(けつ)るに甚た逆理(きりめ)をなすゆへ削(けつ)り難(かた)きもの也 此材(このさい)を以(もつ)て
三弦(さみせん)#3の胴(とう)に造(つく)り又器にも造に#4俗に和にくわりんと呼(よ)ふものは果(くは)
の部(の)#5榠楂(めいさ)なり#6
一種 へにくわりん
和産なし前種(せんしゆ)と同(おな)しく舶来の物あり木理(もくり)くわりんに似て少し柔(やわら)
かく肌(はた)紅紫色の中に朱(しゆ)をさすか如(こと)し此物も三弦(さみせん)の胴(とう)に作(つく)り
て上品也又 器(き)に作(つく)る
【左丁】
棕櫚(さうりよ)#7 しゆろ 比櫚(ひりよ)《割書:通|雅》 并閭(へいりよ)《割書:同|上》
苔児木(たいじほく)#8《割書:名物|方言》
樹(しゆ)直聳(すくたち)して枝(ゑた)なく梢(こすへ)に月々 新葉(しんやう)を生(せう)し四時(しき)凋(しほ)ます一葉の
形 手(て)を開(ひら)くか如し夏の初 梢(こすへ)の葉の間(あいた)に房を生す外皮ありて
形 蜀黍(とうもろこし)の実の如(こと)し長(てう)すれは外皮 落(おち)て《振り仮名:顕る|あらはる》形 魚子(かすのこ)の如し初
黄色花 開(ひら)く時は淡黄色となる花弁(くはへん)甚 微(ひ)にして見易(みやす)からす後
実を結(むす)ふ形いんけんまめに似て短(みしか)し熟(しゆく)すれは黒褐色(くろうるみいろ)となる
下種(かしゆ)して生し易(やす)し此樹材となし水(みつ)に入(いれ)て久しく朽(きう)せす木理 頗(すこふ)
るタガヤサンに似たり外皮の毛(け)をとりて縄(なは)となす又ほうきに
造(つく)る此樹を多(おほ)く養(やしな)ふ時は民用に利(り)あり