翻刻
【右丁】
諸国ともにあり葉(は)の形《振り仮名:紫荊|はなす■う》#1に似て小く嫩苗(わかめ)の時に紅色にして美(うるは)し#2
長すれは緑色(みとりいろ)となる夏月枝の梢(こすへ)ことに穂(ほ)をなす長(なか)さ三四寸花 開(ひら)く
ときは黄白色にして栗(くり)の花の如(こと)し穂(ほ)の本に実を結(むす)ふ形 円(まる)く微(すこ)
し扁(ひらた)みあり形 続随子(そくすいし)#3に似(に)て三の道(すし)あり初(はしめ)緑色(みとりいろ)熟(しゆく)すれは
黒褐(くろうるみ)色となるこれを破(やふ)れは三子あり外に白き粉(ふん)ありて核(かく)
を包(つゝ)む此(この)実(み)より蝋(ろう)を採(と)り蝋燭(ろうそく)を造(つく)る
【左丁】
巴豆(はつ) 《振り仮名:■人|はうしん》#4《割書:本草和名|引雑要訣》 不辛(ふしん) 蜀巴(しよくは)《割書:共に|同上》
ガラナ チクリア《割書:羅|甸》 アメリカアンセ ウラントルホーム《割書:和|蘭》
和産なし実は舶来(はくらい)あり形 海松(かいせう)の子(み)に似て
黄褐(くわうくわつ)也 用(もちゆ)るには修治(しゆち)に説(とく)処(とこ)ろの如(こと)く皮(かは)は
心とを去(さ)り#5仁(にん)を用ゆ其心は仁中(にんちう)にある芽(め)
也心を去(さら)されは吐(と)を発(はつ)する故(ゆへ)也其仁の用
ひやう炒(い)りて研(す)り紙(かみ)に包(つゝ)み圧(を)して油(あふら)を
去(さ)るへし然(しか)らされは毒(とく)甚(はなは)た強(つよ)しこれを
巴豆霜(はつさう)と云 略(りやく)して巴霜(はさう)とも云 本邦(ほんほう)にて
霜と云ときは黒焼(くろやき)のことを云ゆへに巴豆(はつ)の
黒焼を用ゆるは誤り也 飲膳正要(いんせんせいやう)に巴豆
を服するに芦笋(ろしゆん)#6野猪(やちよ)を食(くろ)ふことを忌(いむ)と云(いへ)り