翻刻
四条東洞院の画工藤洞斎はもと
わか郷の人にして知己の友也こたひ
芳扉を尋ねてかたみに無事を
賀して饗応心を尽せり殊に
此ぬしの家童子は故老師来雪翁の
うまこなれは其面影もなつかしく
遅【延=見せけち】々たる春の日の窓に斜なるを
しらす笑語かへる期を失ふ主人
予幸を祝して亀を画て其齢に
たくへて足下の名四方に申たらん
事を希ふのみ
その流れ其名も華の筆四海
春既末の九日都を立てかへるさ
東山のまたみぬ処〳〵に詣て宇治の
かたへ趣く都余波暮行春に
くはゝるも猶さらにおほえ侍りて
花に香にこゝろあるしの情ゆへ
かりのやとりの春おしそ思ふ