翻刻
蔦の葉 葉形切込蔦の葉に似て春出
【挿絵】 葉より薄柿色常にかわらす
秋の頃うつの山を過るに蔦かつら
色付たる中に楓同しくちしほに
染め詠めに時をうつす此一種分て
葉形かわり朱の色すくれたれは
持帰りて植る
実種
ゆめにても見せはや人にうつの山
秋のもみちのつたの下みち
水潜 秋の頃武州秩父の山路を過るに紅葉最中にて
山苔綿をさらす山川の岸に紅葉多く流れに移り
波を染梢の影沈て鮒金魚の如く鰌唐辛子に似たり農
【挿絵】 夫に近付川の名を尋侍れは四十八瀬の内寔を
水潜りと答ふ我もみちの水に潜るを賞美
せしゆへいふやといへは田夫いきまきあに虚
言をいふへいあれなる御堂を巡礼札所三十四番
水潜と奉申此村の名たんへいと高音に云て
去ぬ楓を詠て村里の古事をおかしくも聞
しよと楓の種を持帰りて植る実生葉形も
かわり秋の色随分見事也水くゝりと名付
行水になかれもやらぬもみち葉や
散らぬこすえをうつす山川 義延