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【表題
世界萬国地球與地全図(せかいばんこくちきうよちぜんづ)《割書:凡(およそ)この図(づ)を見者(みることの)先赤道極星出地(まづせきどうきよくせいしゆつち)|一度(いちど)のところを以(もつ)て主(あるじ)とすべし》
【図上】
此図(このづ)阿蘭陀人(おらんだじん)の製(せい)する所(ところ)にして其(その)
大小精疎(だいしようせいそ)異同(いどう)あるに似(に)たれども大概(たいがい)
皆同(みなおな)じ▲|東小洋(とうしようしん)▲|東大洋(とうたいしん)▲|西小洋(さいしようしん)
▲西大洋(さいたいしん)是(これ)と四大海(しだいかい)と云▲|亜細亜(あしや)▲|欧邏巴(おうらは)
▲|利未亜(りびや)▲|南北亜墨利加(なんぼくあめりか)▲|墨瓦臘泥加(めがらにか)
是(これ)を六大州(ろくたいしう)といふ唐土天竺日本(からてんじくにつほん)は皆亜細亜(みなあじや)
州(しう)の中(うち)なり〇|大地南北(たいちなんぼく)の直中(たゝなか)に赤道線(しやくどうせん)
あり南北(なんほく)各(おの〳〵)九十|度(ど)あり春秋(しゆんしう)二|分(ぶん)の日道(じつどう)
の下(した)にて天下第一炎熱(てんかだいいちえんねつ)冬(ふゆ)なき地(ち)なり是(これ)と
暖帯(たんたい)と云|此所(このところ)にては南極(なんきよく)星も北極(ほくきよく)星もみへず
高山(かうざん)に登(のぼ)りてみれば南北(なんほく)の二|星各地(せいおの〳〵ち)に附(つき)てみゆる
是(これ)を極星出地(きよくせいちをいづる)といふ北方(ほくほう)へ直道(ちよくどう)廿五|里移(りうつ)れば
極星(きよくせい)一|度高(どたか)くみゆる日本は三十度ゟ四十度也
蝦夷(ゑぞ)は四十度ゟ四十七度|魯斉亜(ろせいや)は五十二度
なり北へ行程次第(ゆくほどしだい)に高(たか)し九十度|高(たか)ければ
即人(すなわちひと)の頭上(づしよう)に見(み)るこの所(ところ)夜国氷海(やこくひようかい)也
秋分(しうぶん)より明年(めうねん)の春分(しゆんぶん)まで日(ひ)を見(み)ること
なし故(ゆへ)に春分(しゆんぶん)より秋分(しうぶん)まで日輪地(にちりんち)の
際(きわ)を東南西北(とうなんさいほく)へ一|巡(めぐ)りして一日とす夜(よる)なし
是(これ)を半年夜半年昼(はんねんやはんねんひる)といふ
〇|日輪寅時亜墨利加(にちりんとらのときあめりか)大東洋(たいとうしん)に出(いで)て
其日(そのひ)の申の時(とき)に日本(につほん)の上に来(きた)るその間(あいだ)
百八十|度(ど)四万五千|里(り)なり又(また)その日(ひ)の
丑(うし)の時に以西把尼亜(いすはにあ)の福島(ふくとう)にいたる
その間も四万五千里なり一|昼夜(ちうや)に
三百六十|度(ど)九万里|地球(ぢきう)をめぐり
終(おわ)る一時(いつとき)に七千五百とゆく矢(や)よりも
疾(と)かるべし福島(ふくとう)も日本の直下(ちょくか)に
当(あた)れり気候(きかう)日本は同(おな)じ
〇|南極星(なんききよくせい)の出地度(しゆつちど)も赤道線(しやくどうせん)より
はじまること北極星(ほくきよくせい)と同じしかれ
ども南方墨瓦臘泥加(なんほうめがらにか)の地は大海(たいかい)を
北(きた)に受(うけ)て東西に連(つらな)り大州なれども
南極(なんきよく)の地界(ちかい)へ通達(つうだつ)する海路(うみぢ)なし
故(ゆへ)に其地理人物(このちりじんぶつ)をしらず蘭人(らんじん)も南(なん)
方(ほう)をしることあたわず故(ゆへ)に記録(きろく)なし
此四大海六大州(このしたいかいろくだいしう)は紅毛人(おらんだじん)の名付(なづく)る所(ところ)也
故(ゆへ)に中華(ちうくわ)の書(しよ)に見(み)る叓(こと)なし
〇|利未亜州(りひやしう)は暖帯熱国(だんたいねつこく)也|南北(なんぼく)の
界(かい)は正帯(せうたい)に接(せつ)す大浪山(たいろうさん)の岸(きし)と舟(せん)
行(かう)すれば南極星出地(なんきよくせいしゆつち)三十五|度(ど)に
見(み)ゆ日本の気候(きかう)と全(まつた)く同じ
【図内文章右上から右回りに】
極星(きよくせい)九十度の地(ち)は
寒帯夜国(かんたいやこく)なり
南極地界(なんきよくちかい)も
是(これ)に同(おな)
じ
寒帯(かんたい)
常冬(じやうふゆ)なり
五こく生ぜず
大悪地なり
正帯(せうたい)
陰陽中和(いんやうちゆくわ)にて
極上(ごくじやう)の善地(ぜんち)なり
暖帯(だんたい)
常夏(じやうなつ)にて
冬(ふゆ)なき地なり
五|穀(こく)月々に生(せう)ず
地球(ぢきう)之|周(めぐり)三百六十|度(ど)
九万里也大|抵(てい)
日本|道(みち)三四
十里に而
一|度(と)
也
南方大州(なんはうたいしう)メガラニカ昔(むかし)イスハニアの人
墨瓦臘泥加(めがらにか)と云|人(ひと)この
国(くに)へ来(きた)り本国(ほんこく)へかへる故(ゆへ)に其名(そのな)を
もつて国(くに)の名(な)とす正帯中和(せいたいちうくわ)の善地(ぜんち)
なれども中国(ちうこく)の人|渡(わた)るべき海路(うみじ)の
なきゆへ其土地人物(そのとちじんぶつ)をしること
あたはず南極星(なんきよくせい)を南天(なんてん)に
見(み)る土地気候(とちきこう)は北極界(ほくきよくかい)と
同(おな)じきこと準(じゆん)じて
知(し)るべし
【図内文章図左端】
傳(でん)に曰(いわく)
世界(せかい)は
三山六海(さん〳〵ろくかい)
一平地(いつぺいち)なり
人倫(じんりん)の栖(すみか)は大概廿分(たいがいにじうぶん)の一也
暖帯(だんたい)一
正帯(せいたい)二寒帯(かんたい)二
都合五帯(つごうごたい)也