翻刻
【右丁】
一説 さぼてん《割書:江|戸》 さちらさつぽふ さゝらさつぽふ
さむほて イロヘロ《割書:若|水》 タウナス《割書:同|上》
ヲヒユンチヤ《割書:羅|甸》 インチヤアンセトウルンアツプル《割書:荷|蘭》
仙人掌(せんにんしやう)《割書:嶺南|雑記》 覇王樹(はわうしゆ)《割書:花鏡|花史》
此物(このもの)元(もと)竜骨木(りうこつほく)《割書:きりん|かく》の類(るい)にあらす然(しか)れとも広東新語(かんとうしんこ)に二種を以
て一類(いつるい)となし嶺南雑記(れいなんさつき)に辟火(ひくは)の説(せつ)あるに従(よつ)て此(これ)に附録(ふろく)す天(てん)
竺(ちく)及(およ)ひ諸方(しよはう)熱国(ねつこく)の産(さん)にして甚(はなは)た寒(かん)を恐(おそ)る本邦(ほんほう)に栽(うゆ)れとも
育(やしなひ)かたし駿州(すんしう)房州(ほうしう)の間(あいた)には稀(まれ)に大なる物(もの)あり形(かたち)胡瓜(こくは)《割書:きう|り》に
似(に)て扁(ひらた)く深緑色(こきみとりいろ)葉(は)なく白色の剌(とけ)【刺ヵ】あり大なる物(もの)は幅(はゝ)四五寸 節(ふし)
三四尺にして層々(さう〳〵)高(たか)さ丈余(しやうよ)に到(いた)る秋月(あき)梢(こすへ)に花を開(ひら)く単弁(ひとへ)
にして紅黄色(かはいろ)略(ほゝ)薔薇(しやうひ)《割書:いは|ら》に似(に)たり後(のち)実(み)を結(むす)ふ緑色(みとりいろ)疣(いほ)あり中
に仁あり茄(か)《割書:なす|ひ》の実(み)に似(に)て大なり下種(まき)て能(よく)生(せう)す即(すなは)ち広東新(かんとうしん)
【左丁】
語(こ)扁(へん)なる物(もの)《振り仮名:不_レ枝|ゑたあらす》《振り仮名:不_レ華|はなあらす》と云 是(これ)なり此花(このはな)開(ひら)くこと稀(まれ)なり常(つね)に見(み)かたし
故(ゆへ)に広人(かんしん)も見(みる)こと能(あたは)さるなり嶺南雑記(れん[い]なんさつき)に仙人掌(せんにんしやう)人家(しんか)《振り仮名:種_二于田|てんはんに》
《振り仮名:畔_一|うへて》以(もつて)《振り仮名:止_二牛蹱【注①】于牆頭_一|きうしゆをしやうとうにとゝむ》亦(また)《振り仮名:辟_二火災_一|くはさいをさく》《振り仮名:無_二華扶_一|くわふなし》【注②】青嫩而(せいとんにして)扁厚(ひらたくあつく)《振り仮名:有_レ剌|しあり》【注③】毎(さう)
《振り仮名:_レ層|ことに》《振り仮名:有_二数枝杈枒_一|すうししやけあり》而 生絶(せうせつ)《振り仮名:無_レ可_レ観|みるへきなし》其汁(そのしる)《振り仮名:入_レ目|めにいれは》《振り仮名:使_二_レ 人失_一_レ明|ひとをしてめいをしつむしむ》【注④】と云へり
俗(そく)に此汁(このしる)を以て衣服(いふく)の油(あふら)及(およ)ひ垢(あか)を洗(あらへ)は能(よく)去(さ)る苔類(たいるい)の仙人(せんにん)
掌草(しやうさう)はけいぞくさうにしてさほてんの類(るい)にあらす
一種 せんぼんさぼてん
形(かたち)痩(やせ)て細長(さいてう)枝(ゑた)多(おほ)き物(もの)
一種 せつかさぼてん
枝幹(ゑたみき)なく但(たゝ)形(かたち)扁(ひらた)くして鶏(にはとり)の冠(とさか)の如(こと)き物(もの)
【版心の中央部】
さほてん
【注① 「蹱」は「践」、その後ろに「種」脱】
【注② 「華扶」は「葉枝」】
【注③ 「剌」は引用元の原文ママ】
【注①~③は早稲田大学の古典籍総合データベースの『嶺南雑記. 上,下巻』呉震方 著(請求記号:イ04 00347 0019) 1(1分冊目)コマ40 右丁 八~十行目で確認】
【注④ 「人」の前のレ点は衍ヵ】
【十八行下から三字目「種」のルビは別の字(「うへて」ヵ)を消した上から書いている】
【二十行四字目~「枝」のルビと「杈」は別の字を消した上から書いている。また「枝」の下に一点を消した跡有。】