翻刻
浮舟(うきふね)《割書:宇治(うぢ)十 帖(でう)の内》【見出し囲み文字】
【扇の上方】
【右丁】
此 浮舟(うきふね)は東屋(あづまや)の
君(きみ)ともいふとなり
光源氏(ひかるけんじ)の御 子(こ)
かほる中将(ちうじやう)の
しのびづま
にて宇治(うぢ)に
おはしけるを
京にすま
せばやと
三 条(でう)に
家作(いゑつく)らせ
たまふ又
源氏(げんじ)の
御 弟(おとゝ)匂(にほふ)
兵部卿(ひやうぶきやう)
のみやは
【左丁】
ある夜(よ)
中 将(じやう)に
にせて
しのびて
あひ給ひ
しづかなる
所にて
契(ちぎ)らんとて
うき舟(ふね)の君(きみ)を
ぬすみいだし
舟(ふね)にのりて
宇治川(うぢがは)にいで
たまひしてい也
雪(ゆき)の夜(よ)のけしき
月は二十日あまりの
ていなり
【扇の内側】
橘(たちばな)の
小嶋(こじま)は
色(いろ)も
かはらじを
此(この)
浮(うき)
舟(ふね)
ぞ
ゆく
ゑ
しら
れぬ
【扇の下方】
【右丁】
月(つき)ごふんつきのわき紺(こん)
青(ぜう)かすり水(みづ)極(ごく)ざい色(しき)の
ときはこんぜう銀 泥(でい)
にて水(みづ)のしはを
かく其外(そのほか)は
あいろう
なり
浮舟(うきふね)
表着(うはぎ)
ちや
又は
ゑんじぐ
【左丁】
にほふ宮(みや)
ひたい
ごふん
うす
くま
殿上(てんじやう)
眉(ま)
ゆ
べん
ほかし
直衣(なふし)白(しろ)
紋(もん)銀でい
又あいのぐ
こんぜう 地(ぢ)もん
三重(みゑ)だすき
さしぬきむらさき