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翻刻
【上段】
三年 弥生(やよい)の比 和泉(いつみ)式部 播(はり)
州(ま)書写(しよしや)山にもふで帰(かへ)るさに此
所にいたり湯治(たうぢ)せられんとて
先薬師(まづやくし)の宝前(ほうぜん)にもふで玉ふに
俄(にはか)に月のさはりの有けれは
かなしみにたへず一 首(しゆ)の哥(うた)を詠ず
元(もと)よりもちりにまじはる
我なれば
月のさはりと成るぞ
かなしき
と詠し給ふに御戸帳の内
よりも
元(もと)よりもちりの浮世(うきよ)の
しやばなれば
月のさはりも何か
くるしき
【下段】
藤原義孝(ふぢはらよしたか)
君(きみ)がため
おしから
ざり
し
命(いのち)
さへ
ながくもがなと
おもひけるかな