翻刻
【右丁】
(2)
を開始せんとするの状況に在り、以上全線貫通するに至らば《振り仮名:北は挙母|○○○ 》
《振り仮名:より南は蒲郡に達する総延長四拾哩に上り|○○○○○○○○○○○○○○○○○○○》、全く西参の主脳部を連絡
する有力なる交通機関として重要の地位を占むるに至るべく、鉄道の
面目亦自ら一新するを得ん。
此地方一帯固と不毛の原野多かりしが、維新後矢矧川の水を引きて我
国用水中の巨擘と称せらるゝ明治用水の開鑿せらるゝあり、近年又同
川上流に於て枝垂用水の通するに至れるあり、為めに附近の林野尽く
拓かれ、今や穣々たる稲田万頃に連なり、米穀の産出年額数拾万石に
上り、貧弱の郷土忽ち化して富裕の楽境たるに至れり。
然れども一得あれば一失あり、矢矧川は東海道中有数の大河にして其
源を濃信の境峰巒重畳の間に起し蛇蜒数十里流れて衣ヶ浦に入る、水
豊に波緩に万帆の来往織るか如く、《振り仮名:古来山地海浜の交通貨送は一に此|○○○○○○○○○○○○○○○》
【左丁】
《振り仮名:舟揖の便に待つの状況なりしに|○○○○○○○○○○○○○○》、《振り仮名:上記二大用水の開通と共に年内の過|○○○○○○○○○○○○○○○○》
《振り仮名:半は全く水運を杜絶するの己【已】むを得さるに至り|○○○○○○○○○○○○○ ○○○○○○○○》、随て水源地方無尽蔵
の宝庫は再ひ封鎖の運命に陥り、更に何等か新らしき鍵鑰を附与せら
るゝの機会を待ちつゝあり、《振り仮名:三河鉄道は乃ち此鍵鑰に任せんとする天|○○○○○○○○○○○○○○○○○○》
《振り仮名:職を帯びて生れたるなり|○○○○○○○○○○○》
北端の挙母地方は濃信の山岳に連り最/林産及礦産(○○○○○)に富む、木材、薪炭
石材、磨砂、陶土等の天産物は真に無尽蔵の観あり、中間知立大浜の
方面は人文夙に開け産業殷盛を極む、就中、瓦、土管、焜炉、煉瓦、
味醂、木綿等の工産品(○○○)は何れも三州の名を冠して全国に称せられ、米
穀、蚕糸、落花生、甘藷、菜根等の農産物(○○○)又遠く阪神の市場に搬出せ
らる、大浜以南幡豆線の沿岸に至つては海産物(○○○)の豊富なる鮮魚の東京
人士に賞賛せらるゝもの其種類尠からす、加ふるに石材(○○)の産出亦頗多
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