翻刻
【右丁】
秋野(あきのゝ)に臥(ふす)猪(ゐ)
【左丁】
八雲(やくもの)御抄(おんしやう)に
寂蓮法師(じやくれんほうし)が云(いひ)けるは哥(うた)のやうにいみじき
物なし猪(ゐ)のしゝなどいふおそろしき物を
ふすゐの床(とこ)などいひつればやさしきなり
ましてやさしきものをおそろしく云ひなすは
無下(むげ)の事なりト云々画工(ぐわこう)もかくのごとくならんか
後拾遺(ごしうい)に和泉式部(いづみしきぶ)
かるもかき臥(ふす)猪(ゐ)の床(とこ)も寝(ね)おやすみ
さこそねをれめかゝらずもがな【注】
七百 首(しゆ)御製(きよせい)
年(とし)ふれば臥(ふす)猪(ゐ)の床(とこ)もへだゝらぢ
なれぬる山の奥(おく)の廬(いほ)かな
【注 後拾遺和歌集 00821番の歌に「かるもかき ふすゐのとこのいをやすみ さこそねさらめ かからすもかな」とあり。】