翻刻
【右頁】
なにはのあまはみたてまつりて
あなうつくしかゝる人も世にはおはし
けることよたかきもいやしきも
おんあひのみちはおなし心なる也
あかぬ御中のわかれにてわたらせ
給ふらんよとてさま〳〵なくさめ
たてまつりたゝいにしへのこひしさを
いかにしてたへしのひ給ふへきあけ
くれはふししつみ給て中将わか君
見なれにし人々こひしくて心に
御なみたひまもなし此御ありさま
いかゝしてなくさめたてまつらんと
申けれともかひなき御ありさまなり
【左頁】
松風なみのをとしきりにして心
ほそさかきりなしちとりこゑ〳〵
うちなきてたちさわきけれは
みやこのともゝこひしくていとゝかき
くらしけれは
なに事もはかなき
ゆめとおもひなさは
さむるこゝろの
せめてあれかし
御つれ〳〵かきりなきまゝなかうたを
かきをき給へる
うき世をは はかなきゆめと
みるものと おもひなせとも