翻刻
いふべからむ。五条(ごでう)
あたりの夕顔(ゆふがほ)の。宿(やど)は浅香(あさか)が
住居(すまゐ)にとりなし。明石(あかし)の
かたの婚礼(こんれい)は。
葵(あふひ)の上(うへ)の趣(おもむき)を擬(ぎ)し。
その継母(まゝはゝ)なる
隅田(すだ)の前(まへ)は。竊(ひそか)に
藤壷(ふぢつぼ)の更衣(かうい)を模(ぎ)す。
女三(によさん)の宮(みや)の飼猫(かひねこ)は
ねう〳〵と啼(ない)て
妻(つま)を乞(こ)ひ。いぬきが雀(すゞめ)に
あらねども。篭(かご)の鳥(とり)なる娼妓(おゐらん)浜荻(はまをぎ)。
いまだ口(くち)さへ開(ひら)かねば。にげたる噂(うはさ)も
聞(きゝ)およばず。これ等(ら)は後(のち)の話(はなし)物
して。まつ序(ぢよ)びらきを
なすにしこそ