翻刻
《ルビ:矢張|やはり》《ルビ:同辺|どうへん》なりしかば又々急ぎ《ルビ:二川|ふたかは》の《ルビ:駅|しゆく》迄《ルビ:息|いき》
をも《ルビ:継|つが》ず御こしあり同所御本陣に御入有て《ルビ:再|さい》
三御みやくを《ルビ:伺|うかゝ》ひしに《ルビ:漸|やうや》く《ルビ:平脈|へいみやく》になりしかば《ルビ:侍医|てんやく》
も《ルビ:安堵|あんど》し《ルビ:殿|との》も《ルビ:御臣下|ごしんか》の《ルビ:面々|めん〳〵》も先々《ルビ:無事|ぶじ》を《ルビ:祝|しゆく》し
《ルビ:扨|さて》《ルビ:先程|さきほど》の《ルビ:新居|あらゐ》《割書:古名|今切》の《ルビ:変|へん》は何事の《ルビ:知|し》らせなりし
やと人々《ルビ:咄|はな》し《ルビ:合|あふ》て居ける内《ルビ:遥|はるか》に海山《ルビ:震動|しんどう》の
《ルビ:音聞|おときこ》へければスワ《ルビ:大変|たいへん》と人々心をいためけるほど
なく《ルビ:翌|よく》朝に《ルビ:至|いた》り《ルビ:新居|あらゐ》《ルビ:白須賀|しらすか》つなみの為に《ルビ:押|おし》
《ルビ:流|なが》されしと聞へける人々《ルビ:膽|きも》を《ルビ:潰|つぶ》し扨々《ルビ:危|あや》ふき
事かな《ルビ:侍医|てんやく》《ルビ:何某|なにがし》なかりせば《ルビ:殿|との》を《ルビ:始|はじ》め我々迄も
《ルビ:海|うみ》の《ルビ:藻屑|もくず》と成べき物と《ルビ:舌|した》を《ルビ:捲|まい》て《ルビ:感|かん》しける《ルビ:去|さる》に
《ルビ:依|よつ》て此御《ルビ:諸侯|しよこう》は今に新居は《ルビ:御通行|ごつうこう》なく赤坂越
を御《ルビ:通行|つうこう》の御《ルビ:定例|ちやうれい》と成しと《ルビ:聞|きく》此《ルビ:話|はなし》は《ルビ:扨置|さておき》此度
十一月五日七ツ時頃の《ルビ:変事|へんじ》に付て一ツの《ルビ:話|はな》しあり