翻刻
めより二三|回(ど)を浴(よく)して後(の)ち大(をほ)ひに胸腹(むねはら)すき
或(あるひ)は食物(しよくもの)の味(あぢわ)ひよきは全(まつた)く其(その)質(しち)に応(をう)したる
べし若(も)し胸(むね)苦(くる)しきか腹(はら)はりて食(しよく)進(すゝ)まず味(あぢわ)ひ
あしきは果(はた)して不相応(ふさうをう)なるべし
《箱:第三》
暑寒(しよかん)冷暖(れいたん)の候(こう)により又(また)は其(その)患者(くわんしや)の質(しち)により
て其(その)痛(いた)み所(ところ)に宜(よろ)しくとも余(ほかに)病(やまひ)あれば障(さわ)りな
きとも言ふ難(かた)し若(も)し相応(さうをう)せざると思(おも)ふ時(とき)は
先(ま)つ湯(ゆ)に入(い)らずして顔(かほ)を洗(あら)ひ惣身(さうしん)に度々(たび〳〵)湯(ゆ)
を掛流(かけなが)し身(み)を潤(うるほ)し其後(そののち)気(き)を鎮(しず)め静(しつか)に入(い)りて
滝(たき)に打(うた)れず長浴(ちようよく)せず一日に二三|度(と)浴(よく)して自(し)
然(せん)其気(そのき)に馴(な)れ一両日(いちりやうにち)位(くらい)にして終(つ)ひに相応(そうをう)す
るものなり
《箱:第四》
温泉(をんせん)の滝(たき)を採(と)らんとするに男女(なんによ)入(い)り交(まじ)りて
各(をの〳〵)先(さき)を争(あらそ)ひ強(つよ)きは弱(よわ)きを押除(おしの)け勝手(かつて)自儘(じまゝ)に
用(もち)ゆることを許(ゆる)さず一二三と準次(しゆんじ)正(たゝし)くして
最(もつと)も混雑(こんさつ)なく後(あと)と先(さき)とを能(よ)く定(さた)め穏(をだやか)なるは
是(こ)れ浴室中(よくしつちう)の規則(きそく)なり
《箱:第五》