翻刻
【右頁上段】
実(げ)に世(よ)の中(なか)
のことわざにも
かいるには口(くち)より
のまるゝといふ事(こと)
常(つね)〴〵詞(ことば)を
つゝしまずして人
の善悪(ぜんあく)を評(ひやう)
する人をいまし
めたる理言(りげん)の人の
善(ぜん)を前(まへ)にとく者(もの)
はかならず後(のち)に
譏(そし)るものなり人
の是非(ぜひ)善悪(ぜんあく)を
【左頁上段】
説(とか)ざればくち
よりのまるゝの
うれいなし口は
わざはひのかど
ともいましめ
たり勝しむ
べし〳〵
武勇(ぶいう)なる人
までも女により
て身(み)をあや
まつためし古(こ)
今(きん)に多(おほ)しと
佐藤(さとう)忠信(ただのぶ)は
【右頁中段右】
意(い)
梅がえに心
とまらば鴬の
ほふほけきやうの
にほひぬるかな
【右頁下段右】
露(ろ)
すみよしの
松のしづくに
ぬれそめて
世のとうろうの
みとはなり
けり
【右頁中段左】
波(は)
ふねとめて
しばしたゞよふ
みほのうみ
なみにうかべる
もみぢばの
いろ
【右頁下段左】
忍(に)
はつそらの
みやまのしみづ
なみ見れば
月も水にぞ
しのぶなり
けり
【左頁中段右】
浦(ほ)
のりへたる
なみ間を
ふねは
みゐでらへ
よするはきよき
しがのうらかぜ
【左頁下段右】
邉(ヘ)
そのかみに
いつかわかれは
あふさかの
ほとりに
まよふ
うその
世の中
【左頁中段左】
ほとけにも
かみにもなさば
なるものを
おにゝつくれる
いなかやき
ばも
【左頁下段左】
いそがねどけふも
めいどのたびのそら
みちに
まよへば
なほ
おそふ
なる