翻刻
○右御高札之略文(みぎ ごこうさつ の りやくぶん)を毎日怠(まいにちをこた)りなく読(よん)でこれを守り。
朝夕|我身(わがみ)を顧(かへり)みて。あしき事あらば直(たゞ)ちにやむべし。
聊(いさゝか)の善事(ぜんじ)も積(つもる)ときは大善(だいぜん)となり。少しの悪(あく)もかさ
なれば大悪(だいあく)となる又むかし悪事(あくじ)をなしたりとて。心を
此(こゝ)に改(あらた)めて善事(ぜんじ)を積(つみ)なば。などか其|悪(あく)も滅(めつ)せざらん
されば定まる天命(てんめい)の災殃(わざはひ)もこと〴〵く消滅(しやうめつ)して。返(かへ)つて
幸福来(さいわい きた)り家富(いへとみ)栄(さか)へ。子孫繁昌(しそんはんじやう)すること努(ゆめ)〳〵うた
がひあるべからず。尚善行悪行(なを ぜんぎやうあくぎやう)の事は和字功過自知(わじこうくはじち)
録(ろく)といへる仮名本(かなほん)につまびらかなり老若男女(らうにやくなんによ)ともに
是をよみていとけなき童(わらべ)までも教諭(をしへさと)し。一色(ひといろ)に
ても善事(ぜんじ)をおこなひ。一色(ひといろ)にても悪事(あくじ)を止(とゞ)むべし。
子のあしきは親(おや)のおしへあしきなり。家来(けらい)のあしきは
主(しゆ)の誡(いまし)めあしきなり。上(かみ)たるもの其(その)身をつゝしみ
而(しかふ)して下(しも)を教諭(きやうゆ)すべし
善事(よきこと)はまねになりともなすがよし
いつしかなれてまことにぞなる
【嘉永ヵ】七甲寅霜月 書林 静平堂梓