翻刻
事もなく只|形(カタチ)人に似(ニ)たる魚(ウヲ)を知へし
又海上に出れば必大風吹事は彼海人(カノカイシン)海中
にあつて能風雨(ヨクフウウ)の気(キ)に通(ツウ)じたる物ゆへ
大風吹んとする時はまへ方より山|抔(ナド)へ逃(ニグ)る
成へし海小僧出るによつて大風吹には
あらす大風吹んとする故海小僧出る也
常(ツネ)に海中の鱟(ヲヽガメ)風吹かんとするまへには
必|子(コ)をつれて陸(クガ)にあがあり子(コ)を砂(スナ)の中へ
隠(カク)して置(ヲク)物なり夫(ソレ)風は天地四方にあつ
て絶(タユ)る時なし大風は其気の烈(ハケシ)き物也
沖(ヲキ)は一入強吹(ヒトシホツヨクフク)成へし近浦(チカキウラ)なんどは
いまた吹(フカ)ざれとも浪(ナミ)はおのづから高(タカ)し是
沖(ヲキ)を吹ゆへなり是によつて諸魚(シヨギヨ)も
水中のさわがしきによつて風を知(シ)り陸(クガ)
へ揚(アガリ)て風を除(yクル)る物なり