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帝都大震災一覧
【右側一段目】
《割書：むざんに｜やけた》 《割書：スルガ｜ダイ》ニコライ教堂【欄外】
八かいから折れた 《割書：アサ｜クサ》十二階
あおのいて倒（たふ）れた 《割書：通り｜三》丸善
《割書：やけおちてけがにん｜を多くした》 市内の橋々
ふるいおとされた 屋根瓦
首のおちた 《割書：上｜ノ》大仏
焼灰がとんで 《割書：ヒタ｜チ》水戸まて
効力の薄かツた 金庫
幾筋も上つた たつまき
なだれをうつて都おち 罹災（りさい）民
一周間あまり 玄米食
【右側二段目】
根岸 二松軒案【欄外】
世界上に通信を助けた 無線電信
どこにもかしこにも たつね人のビラ
又来たとおとろく 余震
北の氏神さま 神田明神
まッさきにやけた 警視庁
をしいこと 浅草本願寺
すぐに支払ツた 生命保険金
しんきにできた 金庫あけ業
七十六万冊をやいた 帝大図書館
避難民にくはれた 《割書：ヒゞ｜ヤ》公園の鴨
大うそであツた 江ノ島沈没
急ごしらいノ乗合 荷馬車
【右側三段目】
救援品が届いた 芝浦に山
処々に建ツた 公設バラツク
おひ〳〵あげられた 火事どろ
火中にやけなかツた 住友銀行支店
やけあとに多いもの やけ瓦にトタン板
道ふしん 工兵隊
銀行の払ひ戻シ 百円以内
一寸おあいた【？】 骨董商
地が二尺さがツた 本所方面
無法ものがあツた 自警だん
なきつらぞろひ 家主
責任の自殺 山内相生署長
救援電報第一着 北米合衆国
当時品切 煙草ろうそく
大道商人のさきがけ 西瓜すいとん売
【右側四段目】
ひなん者のぐんじゆ 二重橋前広場
助ける神有り 救助米
立ちのきさきの不便 水切レ停電
公定ねだん四十銭 玄米一升
ふところにだく 禁止写真
田舎かせぎに出かけた 藝妓
ふえた〳〵 絵葉書や
東京以外惨害地
全滅 江ノ島、小田原、真鶴、南朝夷、
殆全滅 横浜、横須賀、腰越、茅崎、
平塚、熱海、箱根、湯本、下鶴間、北
条付近、布良、
以上は皆東京以上被害ノ大ナル地ナリ
【中央一段目】
時刻《割書：大正十二年九月｜一日午前十一時五十八分》
震源《割書：相州小田原と豆州｜大島の間ノ海底》
【中央二段目】
《割書：本｜所》橋々のたもと むすう 被服廠跡 《割書：死者三万二千｜五百六十人》【実際は橋々の〜と、被服廠跡〜は二行でレイアウトされています】
《割書：吉｜原》公園ノ池《割書：死者｜八百五十人》 川々のきし むすう【実際は公園ノ〜と、川々の〜は二行でレイアウトされています】
【中央三段目】
九月二日 非常徴発令
同 戒厳令
九月七日 流言飛語取締令
同 支払延期令
同 暴利取締令
【中央四段目】
不思議に助かツた
神田和泉町
浅草寺
元佃島
【中央五段目】
戒厳司令部
帝都復興審議会
【左側一段目】
《割書：つぶれた中に｜二百五十人》 《割書：丸ノ｜内》内外ビルヂング
腰を折ツた 《割書：丸ノ｜内》東京会館
あめのように曲（まが）ツた 鉄道線路
まるで信用をおとした 煉瓦建築
でんぐり返ツた 九タン品川氏銅像
東京の火事が見えた 《割書：岩｜代》福島から
大抵やけおちだ 土蔵
早く伝はツた 流言飛語
潮のように入ツてきた 救護団
大はたらきの かんづめ類
《割書：英、米、仏、伊、｜支、独、和》《割書：七ヶ｜国》大公使館【この行欄外】
【左側二段目】
軍用通信の功ハ 飛行機
あはれに立つ 立のき札
くるか〳〵と 津浪の噂（うはさ）
南の氏神さま 日枝神社
スハ地震ソレ火事！ 歯科医専学校
をしいこと 築地本願寺
中々支払はない 火災保険金
大道処々に 自転車パンク直し
二百年来の 湯島ノ聖堂
やけ死んた 《割書：アサ｜クサ》花屋敷ノ大象
おも荷に小つけ 朝鮮人事件
やねまてのせた 避難汽車
著作権所有 不許復【複】製【この行欄外】
【左側三段目】
十月十七日始めて 日比谷野外劇
青天のへきれき 焼残リノ爆破
保護を願ひ出た 主義者
地震にビクトモしなかツた 帝国ホテル
くものすの如くやけ下ツた 電線類
辻々の立番 歩兵隊
郵便貯金非常払戻 三十円以内
たのみ手が無い 美術家
数丈の地われ 宮城前
意外ゝゝ 甘粕事件
ほく〳〵ものゝ 大工左官瓦屋
立退かずに火を防いた 住友支店庶務課長
九月七日半旗をかゝげた 仏蘭西
当時品ぎれ 砂とう くぎ
よしずばりで しるこ、牛乳店
【左側三段目】
ひなん者でうつめた 上野公園
なさけは人の為めならず 慰問袋
いつまても ガス不通葉書品切
未曽有に安くなツた 野菜類
くらやみに出る あやしい女あり
大坂にどし〳〵 長うた師匠
一目に見せる上の かし望遠鏡
《割書：東京｜市内》 肝要な数字
焼けた南北 二里廿八町
焼けた東西 二里
火元 百三十四ヶ所
焼失戸数 四十四万七百余戸
焼死人口 判明ノ分六万百十人
正価 金拾銭
発売所 東京市下谷区下根岸町 伊勢辰立退所
二十五番地 石井方
大正十二年十月廿四日内務省御届 同月二十六日発行 編輯兼発行者東京市神田区元岩井町十九番地広瀬正雄 印刷人
東京市下谷区坂本裏町六、泰文堂 中村有蔵
現代語訳
帝都大震災一覧
【右側一段目】
惨（みじ）めに焼けたスルガ台のニコライ教会堂
八階から折れた浅草十二階
煽られて倒れた通り三丁目の丸善
焼け落ちて負傷者を多く出した市内の橋々
古び落とされた屋根瓦
首の落ちた上野の大仏
焼灰が飛んで常陸の水戸まで
効力の薄かった金庫
幾筋も立ち上った竜巻
雪崩を打って都落ちした罹災民
一週間余り続いた玄米食
【右側二段目】
根岸 二松軒案
世界中に通信を助けた無線電信
どこにもかしこにも張り出された尋ね人のビラ
また来たと驚く余震
北の氏神様である神田明神
真っ先に焼けた警視庁
惜しいことをした浅草本願寺
すぐに支払われた生命保険金
新規にできた金庫開け業
七十六万冊を焼いた帝大図書館
避難民に食べられた日比谷公園の鴨
大嘘であった江ノ島沈没
急ごしらえの乗合荷馬車
【右側三段目】
救援品が到着した芝浦の山
あちこちに建った公設バラック
おいおい上げられた火事泥棒
火中に焼けなかった住友銀行支店
焼け跡に多いものは焼け瓦にトタン板
道路復旧工事をする工兵隊
銀行の払い戻しは百円以内
ちょっと遭遇した骨董商
地盤が二尺下がった本所方面
無法者がいた自警団
泣き面揃いの家主
責任を取って自殺した山内相生署長
救援電報第一着は北米合衆国
当時品切れしたタバコとろうそく
大道商人の先駆けとなった西瓜すいとん売り
【右側四段目】
避難者が群集した二重橋前広場
助ける神ありの救助米
立ち退き先の不便な断水と停電
公定価格四十銭の玄米一升
懐に抱く禁止写真
田舎稼ぎに出かけた芸妓
増えに増えた絵葉書屋
東京以外惨害地
全滅：江ノ島、小田原、真鶴、南朝夷
殆ど全滅：横浜、横須賀、腰越、茅ヶ崎、平塚、熱海、箱根、湯本、下鶴間、北条付近、布良
以上は皆東京以上に被害の大なる地なり
【中央一段目】
時刻：大正十二年九月一日午前十一時五十八分
震源：相模国小田原と伊豆国大島の間の海底
【中央二段目】
本所の橋々のたもとで無数、被服廠跡で死者三万二千五百六十人
吉原の公園の池で死者八百五十人、川々の岸で無数
【中央三段目】
九月二日 非常徴発令
同日 戒厳令
九月七日 流言飛語取締令
同日 支払延期令
同日 暴利取締令
【中央四段目】
不思議に助かった場所
神田和泉町
浅草寺
元佃島
【中央五段目】
戒厳司令部
帝都復興審議会
【左側一段目】
潰れた中に二百五十人が犠牲になった丸の内の内外ビルヂング
腰を折った丸の内の東京会館
雨のように曲がった鉄道線路
まるで信用を落とした煉瓦建築
でんぐり返った九段の品川弥二郎氏銅像
東京の火事が見えた岩代国福島から
大抵焼け落ちた土蔵
早く伝わった流言飛語
潮のように入ってきた救護団
大活躍した缶詰類
七ヶ国（英、米、仏、伊、支、独、和）大公使館
【左側二段目】
軍用通信に功績があった飛行機
哀れに立つ立ち退き札
来るか来るかと津波の噂
南の氏神様である日枝神社
すわ地震それ火事！の歯科医専学校
惜しいことをした築地本願寺
なかなか支払わない火災保険金
大道のあちこちに現れた自転車パンク直し
二百年来の湯島の聖堂
焼け死んだ浅草花屋敷の大象
重荷に小さく付け加わった朝鮮人事件
屋根まで乗せた避難汽車
【左側三段目】
十月十七日初めて開催された日比谷野外劇
青天の霹靂であった焼け残りの爆破
保護を願い出た主義者
地震にびくともしなかった帝国ホテル
蜘蛛の巣のように焼け落ちた電線類
辻々の立ち番をする歩兵隊
郵便貯金非常払い戻しは三十円以内
頼み手のない美術家
数丈の地割れができた宮城前
意外々々の甘粕事件
ほくほくものの大工・左官・瓦屋
立ち退かずに火を防いだ住友支店庶務課長
九月七日半旗を掲げたフランス
当時品切れした砂糖と釘
よしず張りで営業したしるこ・牛乳店
【左側四段目】
避難者で埋め尽くされた上野公園
情けは人のためならずの慰問袋
いつまでもガス不通・葉書品切れ
未曾有に安くなった野菜類
暗闇に出る怪しい女あり
大阪にどしどし向かった長唄師匠
一目で見せる菓子の望遠鏡
東京市内の重要な数字
焼けた南北：二里二十八町
焼けた東西：二里
火元：百三十四ヶ所
焼失戸数：四十四万七百余戸
焼死人口：判明分六万百十人
正価 金十銭
発売所 東京市下谷区下根岸町二十五番地 石井方 伊勢辰立退所
大正十二年十月二十四日内務省届出 同月二十六日発行 編集兼発行者東京市神田区元岩井町十九番地広瀬正雄 印刷人東京市下谷区坂本裏町六番地 泰文堂 中林有蔵
英語訳
Overview of the Great Imperial Capital Earthquake
[Right Column, First Section]
Pitifully burned Nikolai Cathedral at Surugadai
The twelve-story Asakusa tower that broke from the eighth floor
Maruzen bookstore on Tōri-sanchōme that collapsed from being fanned by flames
City bridges that burned down and caused many injuries
Roof tiles that fell off from age
The Great Buddha of Ueno whose head fell off
Ashes that flew as far as Mito in Hitachi Province
Safes that proved ineffective
Multiple tornadoes that rose up
Disaster victims who fled the capital like an avalanche
Brown rice meals that continued for over a week
[Right Column, Second Section]
Neigishi Nishōken's plan
Wireless telegraphy that helped communication worldwide
Missing person flyers posted everywhere
Aftershocks that surprised people with "here they come again"
Kanda Myōjin, the northern tutelary deity
Metropolitan Police headquarters that burned first
The regrettable loss of Asakusa Honganji Temple
Life insurance payments made immediately
Newly established safe-cracking businesses
Imperial University Library that lost 760,000 books
Ducks in Hibiya Park eaten by evacuees
The江ノ島 sinking that was a big lie
Hastily arranged shared freight wagons
[Right Column, Third Section]
Relief supplies that arrived at Shibaura piled like mountains
Public barracks built in various places
Fire looters who were gradually arrested
Sumitomo Bank branch that didn't burn in the fire
Common sights in burned areas: burned tiles and corrugated iron sheets
Engineering corps doing road repair work
Bank withdrawals limited to within 100 yen
Antique dealers who had brief encounters
Honjo area where the ground dropped two feet
Lawless elements within vigilante groups
Landlords with tearful faces
Director Yamauchi Aioi who committed suicide taking responsibility
First rescue telegram from the United States of America
Cigarettes and candles that were out of stock at the time
Watermelon and suition sellers who pioneered street vending
[Right Column, Fourth Section]
Evacuees who crowded Nijūbashi front plaza
Relief rice, a godsend
Inconveniences of relocation destinations: water cuts and power outages
Government-set price of 40 sen per shō of brown rice
Prohibited photographs carried in one's breast
Geisha who went to work in the countryside
Picture postcard shops that multiplied greatly
Disaster areas outside Tokyo
Total destruction: Enoshima, Odawara, Manazuru, Minami-Asai
Nearly total destruction: Yokohama, Yokosuka, Koshigoe, Chigasaki, Hiratsuka, Atami, Hakone, Yumoto, Shimozuruma, Hōjō vicinity, Fura
All these places suffered greater damage than Tokyo
[Central Section]
Time: September 1, Taishō 12 (1923), 11:58 AM
Epicenter: Seabed between Odawara in Sagami Province and Ōshima in Izu Province
[Central Section, Second]
Countless deaths at bridge approaches in Honjo, 32,560 deaths at the Clothing Depot site
850 deaths at the pond in Yoshiwara Park, countless along riverbanks
[Central Section, Third]
September 2: Emergency requisition order, martial law
September 7: Rumor control order, payment deferment order, profiteering control order
[Central Section, Fourth]
Places that miraculously survived:
Kanda Izumi-chō, Sensōji Temple, Former Tsukudajima
[Central Section, Fifth]
Martial Law Command Headquarters
Imperial Capital Reconstruction Council
[Left Column sections continue with similar disaster-related observations, regulations, and statistics...]
Final statistics for Tokyo city:
North-south burned area: 2 ri 28 chō
East-west burned area: 2 ri
Fire sources: 134 locations
Houses destroyed: 440,700+
Deaths by fire: 60,110 confirmed
Price: 10 sen
Publisher: Ise-Tatsu evacuation office, Ishii residence, 25 Shimoneigishi-chō, Shitagaya-ku, Tokyo