← 前のページ
ページ 1 / 1
次のページ →
翻刻
【頭部 標題 右から横書き】
見立ちう身ぐら
【上段】
鴨居たわんでみぞ
はづれ障子のこらず
ばた〳〵〳〵
○地しんの時
みたで
あろ〳〵
○通物を
おぞうりつかんで
なりともおともが
しとふ御坐り舛
○大工さんの
天川や義平は
おとこでごんす
○此中で
施こし
スリヤ何人のお世話で
〽おまへも御ぞんじの
地震(ゆら)さんのおせわで
○よし原をたすかり
元服してしらぬ顔してゐる女郎
四十四のほね〴〵も
くだくる様にあつ
たはやイ
妻子を見殺 ̄シ
【中段】
此よふな目出たい
かなしひ事が
あろふかいなァ
○万歳楽と言ながら死
日本一の
あほふの
かゞみ
○吉原で死だ人
我こひの
とゞかぬ
しるしと
○はりの下で
わう生【往生】する
まつのかた
えだずば ̄ト切
○人を助ける
百万の敵はふせぐ
ともさほどに
正根はすはらしもの
○吉原で弐人 ̄リ で
死ぬる人
お所望申は
それではない
○あな
ぐら
【下段】
釣とふろうのあかりを
てらしよむなが
ふみは
○じしん大火
絵づ
今日御上使ときく
よりもかくあらんとは
かねての覚悟
○工手間値下ゲ
世俗に申
ちやうちんに
つりがね
○家根屋瓦屋
ほしがる所は
山〳〵ある
○土方
人足
こゝをしきつて
かうせめて
○水番
世話役
しゝしんぢうの
むしとはおのれが
ことだはヤイ
○なまづ
現代語訳
【頭部 標題 右から横書き】
見立忠臣蔵
【上段】
鴨居がたわんで溝が
外れ、障子が残らず
ばたばたと倒れる
○地震の時
見立てて
あろうか
○通りものを
草履を掴んで
何とも供が
したがって座っております
○大工さんの
天川屋義平は
男でございます
○この中で
施しをしている
それは何人ものお世話で
♪お前もご存知の
地震様のお世話で
○吉原を助かり
元服して知らぬ顔をしている女郎
四十四の骨々も
砕けるようであった
はやい
妻子を見殺しにして
【中段】
このような目出度い
悲しい事が
あろうかいなあ
○万歳楽と言いながら死ぬ
日本一の
阿呆の
鏡
○吉原で死んだ人
我が恋の
届かない
しるしと
○梁の下で
往生する
松の方
枝を切らずに
○人を助ける
百万の敵は防ぐ
ともそれほどに
正直な心は素晴らしいもの
○吉原で二人連れで
死ぬ人
お所望申すは
それではない
○穴
蔵
【下段】
釣りと風呂の明かりを
照らし読む長い
文は
○地震大火
絵図
今日御上使と聞く
よりもかくあらんとは
かねての覚悟
○工事の手間代値下げ
世俗に申す
提灯に
釣り鐘
○屋根屋、瓦屋
欲しがる所は
たくさんある
○土方
人足
ここを仕切って
こう攻めて
○水番
世話役
地震中の
虫とはお前が
ことだ、やい
○なまず