翻刻
【右丁】
夫妻共に瑞雲山興徳寺に葬り
其後加藤の家をとろへ給ひ諸
士こと〳〵く離散しけれ足達
氏いよ〳〵ゆかりも絶果跡とふら
わん人もなし塚に草のみ繁り
夕の嵐夜の月ならてハとひくる
ものもあらす獨倉女のみ
忌日ことに詣てゝ拝礼怠らす
しるしにとて榎の木を手つから
植けるか今ハ大木となりぬ誠に
【左丁】
丈夫も及ふへからさる心なり今に
おゐて年毎の七月十四日彼の墓
所江みつから酒を携へ行て是を
すゝめ夕陽の影うつるをも覚へ
す主人の昔を思ひ出老のしはかれ
たるこはねにて今様をうたい■
をすゝむるこころ心に酒を古墳にそゝ
きかつハ拝しかつハ泣き名残り
惜けに家路に帰りけるとそ興
徳寺葷酒をかたく禁し山門