銘細改板江戸大地震出火場所附 - 翻刻

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夫（それ）天地（てんち）の変動（へんどう）は陰陽（いんよう）の病労（びょうく）にしてそのき混（こん）じ濁（にご）り蟠（はたかま）り久しく屈（くつ）して発（はつ）する時は上りて雷雨電光（らいうてんこう）ひらめき下りて地中大ひにうごき念魚（ねんきょ）怒（いか）りて首尾（しゅひ）を發せば《割書：銘細｜政板》江戸大地震出火場所附蒼海（さうかい）もあさしとし須弥山（しゆみせん）も軽（かる）じとす御府中（ふない）は大都（たいと）会（かい）の繁昌地（はんち）にして諸國（しょこく）の人民招（まね）かず群集（あつまり）是に依（より）て遠国他郡（ゑんごくたはう）の親類縁者（しんるいゑんしや）へ過急（くきう）の存亡（ぞんぼう）を吉（よしを）知ら為せん（しらせんかため）所述（のふる）頃は安政二卯年十月二日夜四つ時にはかにゆりいたし其音四方になりひゝきおそろしき事筆に余り老若男女あはてうろたへにけるもならす土藏はくすれ家はつぶれ火事は四方へ一時にもへあかりあはれとやいわん其有さまめもあてられぬ次第也其出火土蔵家数のあらましおしるす御大名様方土藏十壱万三千七百三戸まへ御旗本様方土蔵五万八百六十九戸まへ寺院方堂宮五千八百廿七戸まへ町方土蔵三十壱万千四百三十戸まへ同類焼の土蔵三千七百九十戸まへ惣土蔵数合〆五十八万四千六百十九戸まへ御公儀様より御救小屋御立被下置候場所巾三十六間長七十五間浅草廣小路深川海辺新田幸橋御門外田村権右衛門様御役所御救小屋上野山下御救小屋増場所本所割下水深川八幡地内山の手は牛込市ヶ谷宝羽大塚辺 ○印は出火の番付と見れし ○谷なか　　此へん少々の　　いたみ ○根津へん　　大く　　　ず　　　　れ ○三　いけのはた　　　　　　かや丁へんゆしま　天じん　　　此辺少々　　　　　　いたみ　　　　　　いけのはた　　　　　　出火 ○本郷辺　　此へん穴くら　　くすれけがん　　多し神田明神　　此へん　　小々の　　いくみ　　　　　○せいどう　　此へんの　　御やしき　　多々　　いたみ小石川　牛天神　　○廿七　　　　すは丁より　御茶の水　　　　出火　　　　へんは少々のいたみ　　　　　　　　　　　　　　　　　　○昌平ばし　　　　【横書き】飯田丁　　　　　　　○廿五　小川丁　　　　　　　　　　　　　堀田様　　　　　　　　　　　　　戸田様　　　　　　　　　　　　　やける　　　　　　　　【注記が入ります】すじかい　　　　　　　　　　　　　　　　○神田　　　　　　　　　　　　　　　　田丁板しんみち　　　　　　　　　　　　　　　　へん大くずれ一つばし　　御門外 ○十　　　　　　　　　　　　　　　　○なべ丁　　　　　　　　　　　　　　　　　　かぢ丁　　　　　　　　　○三川丁　　　新土手　　　　　　　　　　　　　　　　はし本丁　　　　　　　　　　　　　　　　少々のいたみ　　　　　本郷丹後守様　　　　　　○ばくろ丁　　　　　外御やしき　　　　　　　　　○あさくさ御門　　　　　やける　　　　　　　　　　　　　　　かまくらかし辺　　　　　　　　　　　　　　　少しのいたみ ○東えいざん　　　　　　田村さま　　　　　　御救小屋　　　　　　山下　　　　　　　　○五　　　　　　　　　上の丁へん　　　　　　　　　　此へん　　　　　　　　　　土蔵　　　　　　　　　　のこらす　　　　　　　　　　やけ　　　　　　　　　　おちる　　　　東え　　　　い山　　　　いたみ　　　　なし　　上のひろこうじ　　片かはのこる　　　　　　　　　長者丁　　　六あみだ　　　天神のこる　　　　　　松坂屋古藏の　　　　　　こらずおちる　　　　　　けが人多し　　　　　　　下谷同朋　　　　　　　町拝領　　　　　　　やしき　　　　　　　井上　　　　　　　ちくこ守　　　　　　　御やしき　　　　　　　やける ○廿六石川様　御やしき【横書き】○御成道【横書き】○みのわみのわ金杉往来なりがたし新よし原江戸丁一丁目より出火二丁目京丁あけや丁角丁伏見丁のこらす火口七つ程けが人九百人余御高札片かはのこる ○一よし原【横書き】坂本　○六　　　坂本　　　壱丁目　　　より　　　三丁目　　　けが人多し　　　まてやける　大そんじ此へん少々いたみ ○東もんぜき御堂　い　たみ　なし　うらもん　くずれ ○広徳寺　此へん　大いに　そん　じ此へん御やき大そんじけが人なし　○四　きくやばし辺此へん大そんじ　寺院少々いたみ此へん御やしき大そんじ寺いんは大方門計そんじけが人なし柳のいなり【横書き】○しんほり寺丁　　　　　　　　　　るかく事　　　　　　　　　　少々いたみすわ丁うら通より出火駒かた少々すは丁黒舟丁殘ずやけるけか人なしみよし丁　にてやけとまるすは丁　くろ船丁 ○廿一此へんの御やしき大そんじ土藏くすれけか人多し ○三味せん堀佐竹右京太夫様土蔵大そんじ山本丁代地へん　少々　いたみ　御くらまへ通り　土蔵大くずれ　八まん社　成田山其外　社無事に而　いたみなし ○さくま丁　てもんやき　少々いたみ　此へんけか　人なし　和泉はし　あたらしはし　辺少々の　いたみこつか原上下やける此へん人五百人余　　　　　　　しす　　　　　○なかだ此へん大そんじ ○せんさうじとうの丸くわん西まかる〇浅草廣かうじ御救小屋　此へん　けが人　多し〇三【横書き】小つか原〇二【横書き】はしばきんざやける ○一よし原よし原　土手　大地われる　鳥尾寺のこる〇今戸　田丁　　　やける山川丁小しん丁〇二【横書き】芝居丁雪神みくず猿若丁壱丁目二丁目三丁目花川戸山のしくけが人多し〇花川戸　山のしく材木丁木母寺梅若様大そんじ土手通り大くずれ　此のへん　少々【横書き】〇向じま小梅瓦丁水戸様御やしき半ぶんやける小梅へん　　〇廿四此近辺大くずれけが人多し此のへんそんじる此のへんなり平ばしへん大くすれ中の郷表丁半丁計やける向井様徳山様　やける牛の御ぜんたび所　　やける〇廿二【横書き】中の郷　あらい丁　松倉丁　大くずれ　けか人　　多し〇大川ばし石原丁半分やける女夫石　のこる〇廿三　　此のへん　　　大く　　　ずれ ○石原　　　北本所番ば丁　　　南ばんば丁　　　多田の薬師　此へん　御やしき　大くすれ　けか人多し ○わり　　下すい　　　　　わり下水　　　　　近へんより　　　　　　　少々出火　　　　　わり下水　　　　　御救小屋此へん御やしき大そんじけが人多し【横書き】○御竹蔵　此へん御やしき方　大そんじけが人多し

現代語訳

そもそも天地の変動は陰陽の不調によるものであり、その気が混じり濁り、長い間蓄積されて爆発する時は、上では雷雨電光がひらめき、下では地中が大きく動き、大鯰が怒ってその頭尾を振れば、《銘細改板》江戸大地震出火場所附青海原も浅いものとし、須弥山も軽いものとする。江戸府内は大都市の繁栄地であり、諸国の人民が招かれずとも群集する。これにより、遠国他郡の親類縁者へ緊急の生死の知らせをするために記述する。時は安政2年（1855年） 10月2日夜四つ時（午後10時頃）突然揺れ始めその音が四方に響き恐ろしいことは筆舌に尽くしがたく、老若男女慌てふためいたことは言うまでもない土蔵は崩れ家は潰れ火事は四方へ一時に燃え上がり哀れというべきかその有様は目も当てられない次第であるその出火と土蔵家数のあらましを記す大名家の土蔵 11万3千7百3戸旗本家の土蔵 5万8百69戸寺院の堂宮 5千8百27戸町方の土蔵 31万1千4百30戸類焼の土蔵 3千7百90戸総土蔵数合計 58万4千6百19戸幕府より救済小屋をお建て下さった場所：幅36間、長さ75間浅草広小路、深川海辺新田、幸橋御門外田村権右衛門様役所の救済小屋上野山下救済小屋増設場所本所割下水、深川八幡地内山の手は牛込、市ヶ谷、早稲田、大塚辺り ○印は出火の番号と見られる ○谷中 - この辺り少々の損傷 ○根津辺り - 大崩れ ○池の端、萱町辺り湯島天神 - この辺少々損傷、池の端出火 ○本郷辺り - この辺穴蔵崩れ負傷者多し神田明神 - この辺小規模の被害 ○聖堂 - この辺りの御屋敷多数損傷 [地図上の各地域の被害状況と出火場所が詳細に記載されている] 小石川牛天神 ○27 諏訪町より出火、御茶ノ水辺は少々の損傷 ○昌平橋、飯田町 ○25 小川町、堀田様・戸田様焼失 [以下、各地域の被害状況が番号付きで詳細に記載されている] 吉原 - 江戸町1丁目より出火、2丁目、京町、揚屋町、角町、伏見町すべて焼失、火元7箇所程、負傷者900人余 [その他の地域についても同様に被害状況が記載されている]

英語訳

The upheavals of heaven and earth are caused by disorders of yin and yang, and when these forces mix and become turbid, accumulating for a long time before erupting, thunder, rain, and lightning flash above, the earth shakes greatly below, and when the great catfish becomes angry and thrashes its head and tail, 《Detailed Revised Edition》 Edo Great Earthquake Fire Locations Even the blue ocean becomes shallow, and Mount Sumeru becomes light. Edo is a prosperous place of a great metropolis, where people from all provinces gather uninvited. For this reason, this is written to inform relatives and connections in distant provinces and other districts of urgent matters of life and death. The time was the 2nd year of Ansei (1855) October 2nd, night, at the fourth hour (around 10 PM) Suddenly it began to shake The sound resounded in all directions, terrifying beyond description, and needless to say, old and young, men and women were all in panic and confusion Storehouses collapsed, houses were crushed Fires broke out simultaneously in all directions What can we call this pitiful sight but unbearable to witness Here we record the outline of these fires and the number of storehouses and houses Daimyo family storehouses: 113,703 units Hatamoto family storehouses: 50,869 units Temple halls and shrines: 5,827 units Townspeople's storehouses: 311,430 units Fire-damaged storehouses: 3,790 units Total storehouses: 584,619 units Places where the shogunate erected relief shelters: Width 36 ken, length 75 ken Asakusa Hirokoji, Fukagawa seaside Shinden, outside Saiwai Bridge Gate Tamura Gonuemon's office relief shelter Below Ueno Hill Additional relief shelter locations: Honjo Warishita-mizu, within Fukagawa Hachiman grounds Yamanote area: Ushigome, Ichigaya, Waseda, Otsuka vicinity ○ marks appear to indicate fire location numbers ○ Yanaka - slight damage in this area ○ Nezu area - major collapse ○ Ikenohata, Kaya-cho area Yushima Tenjin - slight damage in this area, fire at Ikenohata ○ Hongo area - underground storehouses collapsed, many injured Kanda Myojin - minor damage in this area ○ Seido - many mansions in this area damaged [The document continues with detailed damage reports and fire locations throughout Edo, marked with numbers and specific descriptions of destruction, casualties, and which areas were burned or collapsed] Yoshiwara - fire started from Edo-cho 1st district, 2nd district, Kyo-cho, Ageya-cho, Kado-cho, Fushimi-cho all burned down, about 7 fire sources, over 900 injured [The text continues with similar detailed reports for various districts throughout Edo]