みんなで翻刻ver1

コレクション: STAGE1

震雷考説 全 - 翻刻

震雷考説 全 - ページ 16

ページ: 16

翻刻

無下につたなき歌なから時にとりての祝詞(のりと)なれは 改めかへす震雷は天災なれとも必死にあらすされとも 心くるひて詩歌(しか)の趣向(しゆかう)調(とゝの)ひかねたるにつけ思ひ 出せし天喜(てんき)のむかし安倍|貞任(さたとう)源|義家(よしいへ)に追(をい)つ められ弯(ひき)しぼりたる箭(や)さきより「衣のたては ほころひにけりとよみかけければ「年を経し糸の みたれのくるしさにとつゞけけるとかや実(げ)に一発(いつはつ)の 矢先に万死をのかれかたき場合(ばあひ)にてかゝる名句(めいく)を付(つけ) 又永禄の比(ころ)|安宅(あたけ)冬康(ふゆやす)は連歌(れんか)興行(かうぎやう)の席(せき)へ味方の 先手やふれて一ッ多く打死せしと急(きう)をつげるに折 しも己か句番にて「薄(すゝき)に交(まじ)る芦(あし)のむら〳〵と云句へ 古沼(ふるぬま)の浅きかたより野となりてと付て後一座の ものを京地へ落し心しつかに防戦(ぼうせん)の用意 せしはいつれおとらぬ英傑(えいけつ)なり其外にも今はの きはに辞世(じせい)をよみしもの数多(あまた)あれども和歌は かねてよりよみまうけしことも有へし連歌(れんが)は 前句によるものなれば当意即妙(とういそくみやう)心くるはぬ大丈 夫の程思ひやられたり