翻刻
一 抑(そも〳〵)雷の濫觴(らんしょう)は神代の巻に伊奘諾尊(いさなきのみこと)剣(つるぎ)を抽(ぬい)て
阿遇突智(あぐつち)を三|段(きだ)に斬る其一段是雷の神となると有
〇延喜十余年甲戌正月|洛(らく)中大雷|焼亡(しやうぼう)多し
〇延長八庚寅年五畿内大雷洛中別て烈(はげ)しく既(すで)に
内裏(だいり)清涼殿(せいりやうでん)江落て死亡多し是皆(みな)菅公(かんこう)の祟(たゝ)り
なりといへり
〇長和二癸丑三月大雷氷の降こと夥(おびたゝ)しく大さ桃の
如し此時よりひふりと云ことば起(おこ)り呉竹集(ごちくしう)其外の書
にもあらはす程なれば定て大雷なりしや往昔(むかし)より
雷災所々にありといへどもくた〳〵しき故略す近くは
〇寛永三寅年|石雷(いしかみなり)鳴よし陰陽頭より奏聞(そうもん)有けれ
は時の朝廷
後水尾(ごみつのを)院
雨雲のはれよと猶も祈(いの)る哉わけ雷の神のまに〳〵
如斯|御製(ぎょせい)あらせられ津々浦々まても是をしたた
め上|壇(だん)に祭り或は天井(てんじよう)にはり諸(しよ)人つつしみけれは
何事もなく止(やみ)ぬ
〇寛文五丁巳年五畿内大雷大坂城 殿守(てんしゅ)雷火