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翻刻
香蝶棲
豊国画
佐野喜
道因法師(どうゐんほうし)
思(おも)ひわひ
さても
命は
ある
う
き もの
に を
たへぬは
なみたなりけり
八十壱番
此心はおもひわびとは思ひきはまり〳〵
たるなりさりともとたのみたる人
はつれなくなりはてゝ今はせんかた
なくきはまりゆく思ひの心なりかやう
にてはいのちもきえうせぬべきをさ
てもいのちはつれなくてあるものを
かゝるものうきことにかんにんせぬ
ものはなみだなりけりとなり
たへぬとはかんにん
せぬことなり
現代語訳
香蝶楼
豊国画
佐野喜
道因法師(どういんほうし)
思いわび
さても
命は
ある
憂きものに
堪えぬは
涙なりけり
八十一番
この歌の心は「思いわび」とは思い詰まりに詰まったということである。頼みにしていた人はつれなくなってしまい、今はどうしようもなく行き詰まっていく思いの心である。このようでは命も消え失せてしまいそうだが、それでも命はつれなくて存在しているものを、このような辛いことに我慢できないものは涙であることよ、という意味である。
「堪えぬ」とは我慢しないということである。
英語訳
Kachōrō
Toyokuni illustration
Sanoki
Priest Dōin
思ひわび
さても命は
あるものを
憂きに堪へぬは
涙なりけり
Number 81
The meaning of this poem is that "omoi wabi" means being completely overwhelmed with worry and despair. The person I relied upon has become cold and distant, and now my heart is filled with thoughts that lead nowhere but deeper despair. In such a state, my life seems ready to fade away, yet life stubbornly persists. What cannot endure such painful circumstances are my tears.
"Taenu" means being unable to endure or bear something.