翻刻
難き由聞たり如此勇士は全快致さセ度事にてそ
○大番組頭小日向斎藤三太夫殿悴三十郎事小川町辺見
廻居候処井上氏土蔵焼残り有之候間彳【たたずみ】見居内右焼
残土蔵三十郎の頭上へ落即死供致候侍住田万蔵も打伏ら
れけれ共幸に死を脱かれ主人死骸を負帰りぬとなん
○役小十人高弐百俵小川町斎藤正作殿事用事有之小石川
水戸殿百軒長屋前立慶橋東方熊谷富次郎殿へ
参り居大地震ニ逢其家ニ而即死セしとなり尤当所は
近辺七軒揺潰半町計り焼失のよし也
○寄合高七千七百十六石小日向蒔田左衛門殿は用事有之
本郷辺へ出駕也然ル所右地震走大に騒き早々帰宅いた
されしが屋敷不残潰れ表長屋のみ残り有之故供廻の者ニ
差図して奥住居を早々掘穿ち見るに妻女潰家の下ニ成
腹中折破れて目も当られぬ容体也しが同屋敷に住ながら
当主は出駕留守ゆへ一命助りしも不思義の事也
○寄合医師小川町高五百石塙宗悦殿牛込辺御籏本
より急病人有之迎来候ニ付出駕之後地震故引込給ふニ
はや住居は残りなく潰れ近辺四方ゟ出火ゆへ家族を
救出す間もなく悴宗伯殿の死骸を掘セしのみにて皆
焼失に及ける也家士二人女三人即死のよし