翻刻
孔方(かうほう)ふた筋を施(ほどこ)して帰りたるに胡風ゆへ烈(はげ)しければ悉(こと〴〵)
く調度(てうど)ども襖(ふすま)なども庫(くら)に納(おさ)めつる頃神田なる佐久間町
より火おこれりとぞされども空(から)家を焼たるのみにて蔵も残
りけるとかやげにも大師の御|告(つげ)にてかゝる災(わざは)ひある事を
賢(かしこ)くも悟(さと)りしは信ある人の徳也いはゆる一日の計はあしたに有と
の金言恐るへきことにこそはた東都の火災かそふるにいとま
あらずといへとも咽(のど)もと過ては熱さ忘るゝ習ひなれば
防火(ぼうくは)用心土と名つけて拙(つたな)き筆につゞる物かり浅間の山
の烟りならで遠近人の咎(とが)めん事をもいとはず風の神
のあれます日毎には我うま子等が要慎(ようじん)すべきことを
願ふになん有ける
新日吉御所御内東都将監橋
文政十二つちのと丑皐月 司馬の屋よし門嘉門【「嘉門」は丸印】