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地震用心の歌
ものゝ名【古今和歌集の「物名」と同じく、歌に物の名を詠み込んでいる】
魚の名十
さは(鯖)かしき(カジキ)なます(鯰)ふり(鰤)〳〵 うこい(鯉)たら(鱈)
はや(鮠)く いな(鯔)せよ ふか(養鯨)き さゝはら(鰆)
【騒がしき鯰ふりふり動いたら早くいなせよ深き笹原】
【「ふりふり」でいいのか激しく謎ですが…】
鳥の名十
何とき(鵇)も きし(雉子)か(鵞)なく 日は(鶸)う(鵜)かり(雁)すな
藪へ かけ(鶏)とひ(鳶)さき(鷺)へすすめ(雀)よ
【なんどきもきじが鳴く日はうかりすな藪へ駆け飛び先へ進めよ】
【雉子が鳴くと地震があるという俗信がある】
【鶏=かけ、にわとりの古名/鶫は「う」と読むのだろうか?一旦鵜と入れた】
虫の名十
あふ(虻)な くも(蛛)け か(蛾)あり(蟻)し てふ(蝶)きいて だに(蟎)
身に のみ(蚤)しみ(紙魚)て いとど(竈虫)か(蚊)なしき
【危なくも怪我有りしちょう聞いてだに身にのみしみていとどかなしき】
【いとど=カマドウマの古名】
草の名十
ゆり(百合)やんで つ い(藺)には よし(葭)と きく(菊)とて も(藻)
つた(蔦)な(菜)きとこに しば(芝)し ねむ(合歓)らん(蘭)
【揺り止んでついには良しと聞くとても拙き床に暫し眠らん】
【避難先の粗末な寝床か】
木の名十
つき(槻)ひ(檜)すき(杉)やむ かや(榧)と気(き)を
もみ(樅)きり(桐)ぬ まつ(松)もも(桃)ど かし(樫)
地震(ぢしん)なき(梛・なぎ)日を
【月日過ぎ止むかやと気を揉みきりぬ待つももどかし地震無き日を】
現代語訳
地震用心の歌
もののな【古今和歌集の「物名」と同じく、歌に物の名を詠み込んでいる】
魚の名十首
騒がしき鯰ふりふり動いたら早くいなせよ深き笹原
【さわがしき なまず ふりふり うごいたら はやく いなせよ ふかき ささはら】
鳥の名十首
なんどきも雉子が鳴く日はうかりすな藪へ駆け飛び先へ進めよ
【なんどきも きじが なく ひは うかりすな やぶへ かけとび さきへ すすめよ】
虫の名十首
危なくも怪我有りしちょう聞いてだに身にのみしみていとどかなしき
【あぶなくも けがありし ちょう きいてだに みにのみ しみて いとど かなしき】
草の名十首
揺り止んでついには良しと聞くとても拙き床に暫し眠らん
【ゆりやんで ついには よしと きくとても つたなき とこに しばし ねむらん】
木の名十首
月日過ぎ止むかやと気を揉みきりぬ待つももどかし地震無き日を
【つきひすぎ やむかやと きを もみきりぬ まつも もどかし じしんなき ひを】
英語訳
Songs of Earthquake Preparedness
Mononona (thing names) [Like the "mono no na" in the Kokin Wakashū, these poems incorporate the names of things]
Ten Fish Names
When the noisy catfish shakes violently, quickly evacuate to the deep bamboo thickets
Ten Bird Names
Whenever pheasants cry, such days are troublesome - flee to the thickets and advance ahead
Ten Insect Names
How dangerous, hearing that there were injuries makes me feel so deeply sad and melancholy
Ten Grass Names
Though I hear the shaking has stopped and all is well, I shall sleep briefly on this crude bed
Ten Tree Names
Days and months pass, and I worry anxiously whether it will stop - how frustrating to wait for earthquake-free days