東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: 学校教材発掘プロジェクト8

新板絵入伊勢物語 2巻 - 翻刻

新板絵入伊勢物語 2巻 - ページ 25

ページ: 25

翻刻

【右丁】 「五十六」むかし男。ふして思ひ。をきておもひ。思ひあまりて  わが袖(そて)は草(くさ)の庵(いほり)にあらねどもくるればつゆのやどりなりけり 「五十七」昔男。人しれぬ物おもひけり。つれなき人のもとに  恋わびぬあまのかるもにやどるてふ我から身をもくだきつるかな 「五十八」むかし心つきて。色(いろ)ごのみなる男。長岡(ながをか)といふ所に家つくりてをり けるに。そこのとなり成ける。みやばらに。こともなき女どものゐ中成 ければ。田からんとて。此男の有を見て。いみしのすきものゝしはわさや とて。あつまりて入きければ。此男。にげてをくにかくれにければ女  あれにけりあはれいく世の宿なれや住(すみ)けん人のをとつれもせぬ といひて。此みやにあつまりきゐて有ければ。此をとこ  むぐら生てあれたる宿のうれたきはかりにも鬼のすたく成けり とてなん出したりける。此女ともほひろはんといゝければ  うちにひてをちぼひろふと聞ませば我も田つらにゆかまし物を 【左丁】 「五十九」昔男。京をいかゞ思ひけんひんがし山に住むと思ひ入て  すみわひぬ今はかぎりと山ざとに身をかくすへき宿もとめてん かくて。物いたくやみて。しに入たりければ。《振り仮名:面|おも》に水そゝきなとしていき出て 《送り仮名:古今無作者》我うへにつゆそおくなるあまの川とわたるふねのかいのしづくか となんいひていき出たりける 「六十」むかしおとこ。有けり。宮(みや)づかへいそがはしくて。心もまめならざりける 程のいえ家どうし。まめに思はんといふ人につきて。人の国へいにけり此おとこうた のつかひにてつかひにて。いきけるに。ある国のしそうの官人(くわんにん)の。めにてなん有と聞 て。女あるじにかはらけとらせよ。さらすはのましといひければかはらけ 取て出したりけるに。さかれ成けるたち花をとりて  さ月まつ花たち花のかをかげばむかしの人の袖かぞする と。いひけるにぞ。思ひ出てあまに成て山に入てぞ有ける 「六十一」むかし男つくしまでいきたりけるに。これはいろこのむといふずきも