翻刻
【蜷川新右衛門話則をゆるさるゝ事】
『七』
『八』蜷川新右衛門親当(にながわしんゑもんちかまさ)。其身いみぢき才智発明(さいちはつめい)の道(だう)
士ながら。和尚のもとへ立入。禅法(せんほう)に参(さん)しられけり。誠
に仏心の妙奥(めうおう)をつたへ。正法 玄蔵(けんざう)を極む。英雄(ゑいゆう)の士(し)と
いひつべし。和尚も心通(しんつう)あひかなひて。ゆゝしく思し
召けるもことはり也。されば定業期(でうごうご)来(きたり)て。寂滅(しやくめつ)の室(しつ)に
いらんとす。胎下(たいか)【?】のむかしより。是をまつ事とし久し
く思ひまうけたる道(みち)なりとて。快気(くはいき)のいろぞみへに
ける。一門はせあつまり。をの〳〵今日のかぎりに名残(なごり)を
おしみ。したひなげく事。よその見るめもあわれにて。
しらぬ袖さへぬらしける事ことはりにぞみへける。かゝ
るしうたんの折ふし。青々(せい〳〵)たる西(にし)のそらより。しらん
たなびき空中(くうちう)におほひ。音楽(おんがく)きこへ異香(きけう)くんじ花
ふり。妙(たへ)なるかな三 尊(ぞん)廿五ぼさつがく〳〵たる聖衆(せうしゆ)