翻刻
非(ひ)常(じやう)日(にち)用(やう)記(き)
和漢(わかん)萬國(ばんこく)の世界(せかい)を大千(だいせん)世界(せかい)と云(いへ)り里(さと)田《ルビ:畑|はた》谷(たに)峰(みね)峠(とをげ)と国々(くにヽ)の隔(へだて)有共(あれども)
皆(みな)大地(だいぢ)の上(うへ)にして海(うみ)川(かわ)ふかしとても地(ち)のうちなり山(やま)〳〵|高(たか)しとても
みなかくのごとしされば大地(だいぢ)は世界(せかい)のおき物(もの)にして皆(みな)地(ち)のうへに
乗(の)せあるゆへに是(これ)を浮世(うきよ)といへるか雲(くも)霧(きり)風(かぜ)雨(あめ)雪(ゆき)氷(こをり)も地(ち)の發(はつす)るが
ゆえなり元(もと)より非定(ひぜう)は陽(よう)氣(き)隂󠄁(いん)を伏(ふく)し地(ち)を裂(さき)て天に發(はつ)し
出(いで)るがゆへに地中(ちちう)震動(しんどう)なすを地震(ぢしん)といえり《ルビ:徃昔|むかし》孝霊(かうれひ)天(てん)
皇(わう)の五《ルビ:乙|きのと》亥年(いのとし)大の六月朔日に近江(あふみ)の國の地(ち)一夜(いちや)にさけて潮(みづうみ)
となりたるを琵琶湖(びわこ)と名(な)づく同時(どうじ)に駿河(するが)の國(くに)の地中(ちちう)一夜(いちや)に涌(わき)
出(いだ)し豆州(づしう)相(さう)州《ルビ:甲|かう》州《ルビ:武|ぶ》州《ルビ:遠|ゑん》州《ルビ:信|しん》州《ルビ:三|さん》州の七(しち)州(しう)に震動(しんどう)する
事(こと)夥(おびたゞ)しく然(しか)してより高(たかき)地(ち)となり後(のち)に冨士山(ふじさん)或は不二山(ふじさん)とも