翻刻
天明(てんめい)三|癸卯年(みづのとうのとし)
奥州地方大飢饉(おうしうちはうだいきゝん)の
時甚(ときはなはだ)しき村〻(むら〳〵)の
者(もの)ども食(く)ふべき術(てだて)なく
穀物(こくもつ)のある地(ち)を聞(き)き
遥〻志(はる〳〵こゝろざ)して親子夫妻(おやこふさい)
引別(ひきわか)れ他国(たこく)へ趣(おもむ)き又は妻子手(さいして)を
引合(ひきあ)ひ目的(めあて)もなく乞食(こつじき)に出(い)で
途中(とちう)にて食(しよく)なく遠路(ゑんろ)の労(つかれ)に
絶(たへ)がたく山路(やまぢ)などに倒(たふ)れ
死(し)せし者夥(ものおびたゝ)しく
前代未聞(せんだいみもん)の事(こと)どもなり
と通信雑誌天明年中(つうしんざつしてんめいねんぢう)
凶歳日記(きようさいにつき)に見(み)えたり